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2008年05月14日(水) 18時21分

【法廷ライブ】総連事件初公判(8)「総連からのカネ1億を、TSKビルの部屋の手付金に」産経新聞

 《目をつぶり、検察側の冒頭陳述に聞き入る緒方被告。首をかしげて唇を突き出し、不満をあからさまに表す満井被告。検察側は「金銭詐欺」の4億8400万円の分配状況を指摘した後、その使途に話を移した》
 裁判長「もう時間ですけど、そろそろ終わりますか」
 《穏やかな表情ながら、遮るようにせかす裁判長に、検察官は…》
 検察官「すみません。もう数枚ですから、最後まで読まさせてください。あと5分ほどください」
 《冒頭陳述が記載された用紙を示しながら、苦笑いした。一瞬、法廷になごんだ雰囲気がただよったが、被告人席の2人は固い表情のままだ》
 《それにしても、時間に律儀な裁判長のせいか、冒頭陳述の読み上げが異常に早口になっており、これで傍聴人の頭に入るのだろうかと疑問が浮かぶ。傍聴席を求めて百数十人が抽選に臨み、開廷当初は満席だった注目の初公判だったが、このころには傍聴人は続々と退廷し、半数ほどになっていた》
 《検察官はまず、緒方被告が満井被告から分配されたとされる総連資金1億円の使途について言及する》
 検察官「緒方被告は1億円をTSKビルのマンション棟2室の買い取りのため、手付け金に充てようとした。買い取り交渉を空手団体総裁に依頼したが進まず、19年6月7日ごろ、会社会長に交渉を依頼し、分配金を原資とした1億円の小切手を渡した」
 《目をつぶっていた緒方被告が突如、目を開けた。そして冒頭陳述を読む検察官に鋭い視線を向けた》
 「会社会長が両被告に買い主がだれになるのか尋ねると、満井被告は『緒方先生です』、緒方被告は『私が買い主です』と答えた。しかし交渉はまとまらず、小切手は緒方被告に返還された」
 《その後、緒方被告が分配金1億円について、両被告が「総連資金ではない」という口裏合わせをしていたと指摘した。また、総連中央本部の取引発覚以降、3被告が分配金のすべてや一部を返したそれぞれの行為を明らかにした。そして、検察側が「被害者」と認定した総連側の被害感情を明かし始める》
 検察官「(総連財務担当の)趙氏は、3被告が総連側をだまし、土地・建物をだまし取ってやろうと考えていたのであれば、絶対許すことはできないという被害感情を持っている。(総連代理人の)土屋弁護士は、総連をだましたのであれば、総連の窮状に乗じた悪質な行為であって、到底許せないという被害感情を持っている」
 《検察側の冒頭陳述は終わった。林裁判長が緒方被告の弁護人に弁護側冒頭陳述を読むよう促す》
 緒方被告の弁護人「その前に1点だけよろしいでしょうか。ただいまの検察側の冒頭陳述ですが、改めて削除と陳述の撤回を求めます」
 《緒方被告の弁護人が求めたのは、両被告がTSKビルの地上げ事業で資金を必要としていた「動機」の部分とみられる》
 検察官「理由がないと思料します」
 裁判長「裁判所としても削除しません。却下します」
 《続いて、緒方被告の弁護人が冒頭陳述を読み始める。緒方被告は検察側の冒頭陳述を聞いているときとは異なり、弁護側冒頭陳述の紙を手に取り、穏やかな表情で見ている。弁護人はプロジェクターを使ってビジュアルに訴える作戦のようだが、検察官と一緒で、早口で聞き取りづらい》
 緒方被告の弁護人「緒方被告自身、終戦後の旧満州から家族とともに命からがら帰国し、祖国との絆の大切さを知った体験から、在日朝鮮人の権益を守る必要性と同情心が芽生えた…」
 《緒方被告が総連中央本部の取引に関与することを決意するようになった心情を述べる。きっかけは、満井被告の紹介で総連代理人の土屋弁護士に会ったことだった》
 「その面談前に緒方、満井両被告が在日朝鮮人の境遇に共感しているかのように装うことなどを打ち合わせたことはなかった」
 《弁護人は両被告の共謀関係を否定した》
 「(昨年)4月13日ごろに土屋弁護士と面談した席上、満井被告は『資金調達は間違いなく行います』と言った。面談後、緒方被告が満井被告に『大丈夫なのか』と聞くと、『大丈夫です』と返答した」
 《弁護人は、満井被告がすでに資金調達先を見つけているとの確信を緒方被告が深めたと主張。緒方被告が適正な取引を実行しようとしていたと強調した。さらに、検察側が動機と主張したTSKビルの地上げについて述べる》
 「空手団体総裁との契約(明け渡し報酬2億9000万円など)や、マンション棟2室の買い取り交渉はまとまらなかった」
 《弁護人は「TSKビルの地上げで資金を必要としていた」との検察側の主張を否定した。緒方被告は弁護士の発言に合わせ、ページをめくり続けている》

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