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2008年05月12日(月) 00時00分

「つくる人を増やす」面白法人読売新聞

本社は鎌倉、ユニークな部署名、サイコロ給

「2007年に開発した77の企画のうち、1つか2つはサービスとして正式にリリースできそうです。なかなかそこまでいかないのが難しいところです」
——組織名もユニークですね。

柳澤 会社の部署名もデザイナーがいる「意匠部」、広報宣伝は「演出部」というようにユニークな名前をつけています。新規事業を担当する「ポジティ部」というのもありましたが、今はありません。「管理部」も、カヤック社員に何かを与え続ける部署という意味で「ギブ&ギ部」に改名しました。この部のメンバーを中心に運営する事業が、総務系の情報を集めた便利サイト「総務の森」です。

——サイコロを振って給料の一部を決めると聞きました。

柳澤 そうです。社員自らが「ギブ&ギ部」の担当者の前で、サイコロを振ります。出た目に基本給の1%を乗じた金額を「運命給」としています。スポーツはルールの中で勝ち負けがあります。人の評価も、ある一面に限った条件の中で成り立つものです。人は評価に一喜一憂し、ダメという評価をもらい続けると、落ち込んでしまうものです。一面では評価されないかもしれないが、他面では評価されるわけだから、そういうことをわかって欲しいと思い、サイコロを導入したのです。

——鎌倉に本社を構えたのはどうしてでしょうか?

柳澤 生まれが香港だったこともあり、海と山がある土地の雰囲気が好きなのです。好きな町で働き、住むことで、鎌倉に貢献したいという思いもあります。鎌倉にいることで、地理的に競争上不利になる面もありますが、通信手段が発達したので、地理的デメリットは克服しています。好きな地で働くという、新しいワークスタイルに挑戦しているともいえます。

 また、こういった考えで鎌倉に本社を置いていると、鎌倉で働きたいという人を採用できるメリットもあります。

——2007年に移転した本社ビルの内装は、とても和風ですね。

柳澤 天井がとても高いので、一段高いところに畳の床を設け、畳が机にもなるようなデザインにしました。鎌倉の町をイメージし、和風な内装にしたのと、コミュニケーションのとりやすさを大事にしたので、まさに「和をもって尊しとなす」です。畳の机が床にもなるので、机や床といった固定概念を捨てた挑戦でもあります。頭が固くならず、柔軟な発想が大事なので、そういう柔軟な発想ができるオフィスにしたかったのです。

 鎌倉のほか、自由が丘にも、事務所がありますが、人工芝を敷いた庭にブランコや滑り台があります。ブランコに乗りながら会議したこともあります。

——グーグルでは、仕事以外に自分の好きなテーマのために働ける「20%ルール」というのがあります。

柳澤 カヤックでは、働き方を厳しく管理していないから、どういう風に働くかは、各人によります。海や山で遊びたいから、鎌倉に本社を置いているわけで、朝に、サーフィンしてから、仕事する社員もいます。24時間遊び態勢で、24時間働くのです。

 海外に長期滞在してみたいからという思いから、「旅する支社」という制度も作りました。この5月には、イタリアで「旅する支社」を作り、社員交代で働いています。

——今手がけているもので、これから伸びそうなサービスはどれでしょうか?

柳澤 絵の測り売りサービス「ART-Meter(アートメーター)」の売上は伸びています。画家から絵を預かり、買いたい人に絵を売るという仕組みで、画家は約2000人が登録しています。毎月1000作品がアップされ、作品の面積に応じて売ります。1平方センチメートル当たりの単価は3円からで、素材によって最低単価が異なります。人気が出てくると、単価も上がってくる仕組みは、Tシャツオーディションサイトと同じです。

——どんな人が買っていくのですか?

柳澤 家に絵を飾りたいという人が、インテリアとして買っていくのです。購入者登録している人は5000人ぐらいで、結婚や引っ越し祝いとして、絵のテーマを依頼するケースもあります。ちょっとした画家に頼むと結構高額になりますが、アートメーターでは好きな絵画が、1万円ぐらいで購入できるのです。まったく市場のなかったところから生み出したサービスなので、カヤック的といえます。

——今後取り組みたいテーマはありますか?

柳澤 今年は、エコ事業に取り組もうと思います。カヤック的にいえば、「CO2を減らそう」というだけではネガティブなので、「CO2を使って酸素を生み出そう」という考えこそが「つくること」につながります。実際に酸素を生み出すわけではありませんが、カヤック的な新しく生み出すサービスができればいいと考えています。(メディア戦略局 山根章義)  

(敬称略)

                      

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20080512nt0f-1.htm