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2008年05月12日(月) 00時00分

「つくる人を増やす」面白法人読売新聞

 経営理念に「つくる人を増やす」を掲げ、全社員の名刺には、“クリエイター”の肩書きがつく。これまでにないアイデアを形にして世に送り出し続けているウェブ制作会社「カヤック」代表取締役の柳澤さんに、「面白法人」について聞いた。

設立当初からCGM的サービスを開発

柳澤大輔  やなさわ・だいすけ
カヤック代表取締役
 1974年、香港生まれ。96年に慶応義塾大学環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社、子会社の通販会社で、アウトドア商品の企画などを担当した。98年に同社を退社後、大学時代の友人2人と「面白法人カヤック」を設立した。
——面白法人カヤックを設立した経緯を教えてください?

柳澤 大学を卒業してすぐに起業するのでは社会経験が浅いので、2年間、ソニー・ミュージックエンタテインメントで働きました。起業する際、何をするかというよりも、だれとやるかが大事でしたので、大学時代の同級生2人と一緒に設立しました。当時、一人は大学院に在籍し、もう一人はアメリカ放浪中でした。会社名は、3人の頭文字からとりました。

——最初は、何を手がけたのでしょう?

柳澤 ちょうど普及してきたインターネットのホームページ製作の請負をしながら、いろいろなアイディアを形にしてきました。最初の3年間は、7月7日に新しいサービスを立ち上げていました。最初のサービスのうちの一つが、「思い込み倶楽部」です。

 一人で念じるより、多くの人が念じれば、実現しやすいと思い、いろいろな「思い」をネットで募りました。「明日ゴルフなので、晴れて欲しい」「席替えで隣に好きな人が座って欲しい」という私的な、ささいな欲求から、「世界が平和になりますように」というスケールのあるものまでさまざま。その「思い」に共感してクリックした人の数を集計して、「思いは100人に増幅されました」と表示するのです。

——ほかにはどのようなサービスがありますか?

柳澤 サイトを売買するサービスもやりました。今でこそ、専門の会社ができるほどサイト売買市場は大きくなりましたが、当時は、数件しか売買が成立せず、サービスをやめてしまいました。ちょっと時代を先取りし過ぎたかもしれません。

——成功したサービスはありますか?

柳澤 成功した中に、「T-SELECT(ティーセレクト)」があります。これはデザイナーがTシャツのデザインを公開し、買い手が10人集まれば実際販売されるという仕組みです。Tシャツオーディションサイトです。最初は、1色しか使えないのですが、デザイナーはTシャツが販売されるたび、使用できる色が増え、販売価格も上がります。デザイナーは自分のデザインTシャツを買って欲しいのでアピールしますし、買い手のユーザーも自分の興味あるデザイナーのサイトを見て、コメントするので、情報交換の場ができます。当時はまだCGM(consumer generated media)という言葉はありませんでしたが、まさに口コミで広がるCGMでした。このサービスはライブドアに売却しましたが、今でも運用はうちでやっています。

——7月7日に新しいサービスを出すなど、数字にこだわっていますね。

柳澤 7月7日だけでなく、2007年には1年間で77のサービスを開発したように、意味のある数字を自ら設定し、目標にしています。やはり、目標を立てると立てないとでは、結果が違ってきます。売上目標でもいいし、サービスの開発数でも、何日までにするというのでもいいのです。ただし、目標設定は簡単に達成するレベルではだめで、自分のレベルよりちょっと上に設定すると成長度が高くなります。

——面白法人という「屋号」はどうしてつけたのですか?

柳澤 会社に法人格があるならば、人と同じようなキャラクター、個性を持たせようと思ったからです。自分で面白いといってしまう人間は大抵面白くないと相場が決まっていますが、面白くなくても「自分たちだけが面白い」と思っていればそれで幸せなのだからいいのではないか…という、ある種、キャッチコピーのノリでつけました。

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20080512nt0f.htm