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2008年05月11日(日) 00時01分

朝鮮人特攻隊員の祈念碑、撤去へ 「親日」に韓国で反発朝日新聞

 【泗川(韓国南部)=箱田哲也】日本軍の特攻隊員として戦死した朝鮮人青年を慰霊するため、韓国通の女優、黒田福美さんらが韓国・泗川市で10日に予定していた祈念碑の除幕式が、直前に中止になった。左右両派の団体が「日本のために死んだ者を称賛できない」などと反発。同市は祈念碑をいったん撤去して保管する方針だ。

女優の黒田福美さん

 黒田さんは、戦争の犠牲になった朝鮮の若者の名前を故郷に刻もうと日韓を奔走。特攻隊員として沖縄周辺の海で24歳で戦死した卓庚鉉(タク・キョンヒョン)(日本名・光山文博)さんがいたことがわかった。卓さんの地元、泗川市が3千坪の土地を提供。5メートルの石碑も完成し、10日午前に除幕式を開くことが決まった。

 だが、除幕式が近づくと、植民地時代の独立運動にかかわった人々らでつくる右派の光復会が「韓国人であっても特攻隊員は天皇に忠誠を誓った人物」と祈念碑への反対を表明。韓国政府の依頼で、植民地時代の「親日人名辞典」のリスト作成を進める民族問題研究所も「侵略戦争の犠牲者だが、連合軍からみれば加害者でもある」と除幕式の延期を主張した。左派系団体からも同様の声が出た。

 泗川市は混乱を回避するため、市長の式典欠席を決定。9日、黒田さんらに式典の中止を要請するとともに謝罪したという。日本からも約30人がツアーを組んで参加し、除幕式に合わせてシンポジウムを開く予定だったが中止に。10日昼には黒田さんや参加者らが現場に向かったものの、光復会のメンバーらに道を阻まれ、石碑に近づくことすらできなかった。

 黒田さんは、国籍にかかわらず沖縄戦の全犠牲者の名を刻む「平和の礎」のような施設を目指していた。「創氏改名で日本人とされて死んでいった人たちの魂が帰れる場所を作りたい、という一心でやってきた。今回の問題の答えは、後に韓国社会自身が出してくれると信じている」 アサヒ・コムトップへ

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