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2008年05月10日(土) 14時38分

「三浦元社長、移送不要」ロス郡上級裁が検察の主張退ける読売新聞

 【ロサンゼルス=飯田達人】1981年11月のロス疑惑「一美さん銃撃事件」を巡り、米自治領サイパンで拘置されている元会社社長、三浦和義容疑者(60)(日本で無罪確定)が逮捕状破棄を求めた訴訟の第2回審問が9日(日本時間10日)、ロサンゼルス郡上級裁判所であった。

 スティーブン・バンシックレン裁判官は、現段階で三浦元社長をロスに移送する必要はないとの判断を示し、判決が確定した事件を再び裁くことを禁じた「一事不再理」について、次回6月16日の審問で審理することを決めた。

 次回は、サイパンで拘置中の三浦元社長もビデオ中継で審理に参加させる。

 カリフォルニア州刑法が2004年に改正される前は、一事不再理の対象に外国での判決も含めていたことから、弁護側は「三浦元社長を再び起訴することはできない」と主張。検察側は「審理には容疑者本人の出廷が必要」としたうえで、逮捕状の有効性を争う訴訟では、一事不再理についての本格的な主張は必要ないとの立場を取っていた。

 この日の審理で、同裁判官は「一事不再理」が同州刑法に明記されていることから、「本質論に入るべきだ」と指摘。「一事不再理を審議するのに被告の出廷は重要ではない」「7000マイル(約1万1200キロ)も移送するのはコストもかかる」と検察側の主張を退けた。

 同裁判官は「事件については報道されているが、私は事実を把握しているわけではない」とも述べ、日本の裁判記録の英訳を提出するよう求めた。

 審問後、マーク・ゲラゴス弁護士は「裁判官の判断をとても感謝している。次回に決着し、三浦氏が釈放されることを期待している」と述べた。ロス郡検事局のサンディ・ギボンズ広報担当官は「失望したというわけではない。裁判官は本質を審議したいのだろう」と語った。

 ◆検察、戦術変更迫られる

 三浦元社長の移送を巡っては、サイパンの北マリアナ上級裁判所でも移送の可否を決める裁判が進んでいる。だが、移送の根拠となる逮捕状の有効性を争うロスの訴訟で、速やかな移送を求めた検察側の主張が退けられたことで、ロス郡検事局は当初描いていた裁判戦術の変更を迫られている。

 6月以降のロスでの審問で、逮捕状破棄の決定が出て検察の敗訴が確定した場合には、ロスへの移送令状が取り消される。北マリアナ司法省の検事は「拘束の根拠がなくなれば速やかに釈放しなければならない」としており、この場合、サイパンでの審問を経て三浦元社長は釈放されるが、検察側には上訴する道があり、さらに審理が長引く可能性がある。

 逆に逮捕状有効の決定が出れば、同上級裁判所が審問を開いたうえで移送を決定する可能性が高い。

 三浦元社長の日本側の弁護人、弘中惇一郎弁護士は10日朝、この日の審問について「検察側の主張を退けたことは大きい。逮捕状無効に向けた重要な第一歩になった」と語った。

 ◆来週、保釈申請へ

 【サイパン=山下昌一】ロス郡上級裁判所の判断を受け、三浦元社長のサイパンでの弁護人、ブルース・バーライン弁護士は「大変勇気づけられる内容」と語り、来週にも北マリアナ上級裁判所に保釈を申請する意向を示した。同弁護士が接見して審問の結果を伝えると、三浦元社長は満足した様子だったという。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080225-1331217/news/20080510-OYT1T00213.htm