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2008年05月10日(土) 13時21分

現場は「変質者ロード」 愛知女子高生殺害…カギ握るプロフ「怖い」産経新聞

 「なんか、こわい」。愛知県豊田市で5月3日、自宅まであと1キロの通学路上で無残な他殺体となって発見された少女は生前、プロフにそう書き残していた。「変質者ロード」とも呼ばれていた現場周辺だが、少女の遺留品からはジャージが持ち去られていた。高校に入学したばかりだった少女。GWを間近に控え、何に怯えていたのだろうか。

 ■無惨…口にタオル詰め、首には7重にテープ

 豊田市の農道で愛知教育大附属高校1年、清水愛美さん(15)の変わり果てた姿が見つかったのは5月3日だ。
 前日の2日に、通常帰宅するはずの午後7時半ごろになっても愛美さんが帰宅せず、携帯電話でも応答がなかったことから、3日未明になって家族が豊田署に捜索願を届け出た。
 現場に遺留された愛美さんの携帯電話の微弱電波から現場を絞り込み、捜索にあたっていた知人が愛美さんの遺体を発見した。
 遺体の状況からは犯人の執拗な犯行態様がうかがえる。
 愛美さんの顔面には目や鼻を中心に殴られた跡があった。
 さらに、首には「電気絶縁テープ」と呼ばれ配管補修工事などで使われる伸縮性のある黒いテープ(幅3・8センチ)が7重に巻き付いていた。テープは口をふさぐ目的で巻かれたが首にずり落ちたとみられ、口の中には声が出せないようにタオルが押し込まれた形跡もあった。
 口付近には強い圧迫の跡もあり、タオルを押し込み手で口をふさいだことや、殴られた際の鼻血が気道に詰まったことにより窒息死したとみられる。
 
 ■成績優秀、夢は「母のような看護師」
 
 不条理な犯罪によってわずか15年で命を終えざるをえなくなった愛美さんは、団体職員の父と看護師の母、3人の兄との6人で暮らしていた。
 末っ子の一人娘だけあって両親から望まれて生を受け、深い愛情を注がれて育ったことは想像に難くない。愛美さんもこうした家族の愛情に応えるように両親を敬った。
 「尊敬する人はお母さん。看護師だから、あこがれる」
 そう周囲に語り、自身も将来は母親と同じ看護師を夢見ていた。
 「まなちゃん」の愛称で友人も多く人望もあった。今春まで通っていた市立中学校では生徒会の副会長、卓球部では副キャプテンも務めた。

 教師からも「責任感が強くまじめ」と評判。そうした人柄は中学校の卒業文集にも現れている。
 《いろんな人に助けられ、たくさん支えられてきて2年半、卓球を楽しく続けられたと思います。これからも感謝の気持ちを忘れることなく生きていきたいです》
 成績もトップクラス。高校へは推薦で入学した。
 「勉強ができて入学後のテストで上位だった」(友人)
 勉強だけでない。入学後にはサッカー部に入り、マネジャーを務めた。
 もちろん年ごろだけに恋愛もあった。
 現代っ子らしく携帯サイトで自己紹介する「プロフ」を運営し、サイト上で日々の思いや恋愛の悩みをつづった。
 《遊んだ!!》
 《楽しかった》
 《もうやだー》
 プロフでは思春期の女の子らしい天真爛漫な記述が並ぶが、事件前日ごろからこれまでの内容と違い、何かに怯えているともとれる記述が増える。
 
 ■事件を予感? プロフに「なんかこわい」「気持ち悪い」
 
 以下は事件前日の5月1日に愛美さんがプロフに書いた内容だ。
 《なんであんな日に限って見ちゃったのかなあ…ほんともういや…》(7時6分)
 《なんかこわいんだけどお母さんおそいよお》(19時)
 《違うんだよね…? 気のせいだよね?》(22時7分)
 これだけでは意味は分からない。第三者に分からず、友人にだけわかる揺れ動く恋愛感情をつづっている可能性もある。だが書き込みの時間から考えると、前日の夜に通学路で何かを目撃してしまい、朝から就寝時まで何かに怯えているとも十分に考えられる。
 そして犯行当日の5月2日、事件の約7時間前には最後の書き込みが残されている。
 《気持ち悪い 部活どうしよ》(12時12分)
 愛美さんは部活動を終え午後6時45分ごろに学校を出て事件に巻き込まれていたが、当日の昼には部活動に参加するかためらっていたことになる。
 これまでのプロフの書き込みから考えると「気持ち悪い」は単に体調不良を訴えたのではなく、部活動で帰宅時間が遅くなり、暗い夜道を1人で帰らざるをえないことへの「SOS」だったのではないか、と推測するのは考えすぎだろうか。
 
 ■現場は「変質者ロード」 性犯罪も多発
 
 豊田市は言わずと知れた世界屈指の自動車メーカー「トヨタ自動車」の企業城下町。だが、工場だけでなく、田園地帯もまだまだ多く残っている。

 現場は国道から1本入った農道で周囲には広大な田畑が広がる。街灯もポツンポツンとある程度で薄暗いうえ、最も近い民家でも数十メートル離れている。直近には伊勢湾岸自動車道が通り、「事件が起きたらどんなに叫んで助けを呼んでも誰にも聞こえない」(近くの住人)。
 そう聞くだけで薄気味悪くなるが、現場付近では4月以降、女性が被害にあう犯罪が相次いでいた。
 4月23日夕には、現場から約8キロ離れた東郷町で愛美さんと同じ高校に通う女子高生が若い男に自転車ごと押し倒された。
 25日にも現場から約3キロの農道で、自転車に乗った女子高生がバイクの男に押し倒された。男は高校の場所を尋ねて近づいてきたという。この事件が起きたのは愛美さんの事件と同じ農道。街灯もなく手口にも共通点が多い。
 「農道は露出狂などの変質者も多く、女性が体を触られるなどの被害はこれまでもあった」(地元の住民)
 《なんかこわい》
 《気持ち悪い》
 愛美さんがプロフに書き込んだ不安。こうした被害に遭遇してしまったのだろうか。
 
 ■持ち去られたジャージー 犯人の動機は…?
 
 犯人像はどういった人物なのか。
 現場の足跡からは愛美さんのもの以外には1種類しかなく、単独犯だと推定されている。
 一方、愛美さんが被害にあった時にもっていたスポーツバッグが現場から南東に約15キロ離れた岡崎市稲熊町の土手の斜面で捨てられているのが見つかった。このため、捜査本部では、犯人は車かバイクを利用していたとみている。
 が、注目されるのはバッグの中身だ。
 バッグの中からは教科書類や弁当箱などが入っていたが、学校から持って帰っている紺色のジャージーなど衣服がなくなっていた。
 捜査本部の発表では、愛美さんは乱暴された形跡はない。遺体からも犯人の体液は検出されていなかった。犯人が身元発覚につながる携帯電話を現場に残しながらも、ジャージーなど衣服を持ち去ったということは何を意味するのか。
 捜査関係者はこう指摘する。
 「女性の衣類に異様に執着を示す変質者というものがいる。こうした変質者に襲われてしまったのかもしれない」
 捜査本部でも現場付近で相次いだ女性を狙った類似事件との関連を調べるため、性犯罪の専門家を捜査に組み込み周辺の不審者の洗い出しに全力を挙げている。 
 事件直前に愛美さんが発していた「SOS」。
 愛美さんの笑顔は二度と戻らないが、捜査の網は着実に犯人に迫っている。

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