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2008年05月10日(土) 02時30分

<東京地検特捜部>防衛企業から聴取 秋山氏への資金解明毎日新聞

 社団法人「日米平和・文化交流協会」の秋山直紀専務理事(58)が関係する米国法人にコンサルタント料を支払っていた複数の防衛関連企業について、東京地検特捜部が一斉に事情聴取を始めたことが関係者の話で分かった。企業側が04〜06年に支払った資金のうち約1億5000万円は秋山氏の個人所得になったとみられるが、秋山氏は約2000万円しか税務申告しておらず、特捜部は所得税法違反(脱税)の疑いもあるとみて資金の流れの解明を進めている模様だ。

 秋山氏は日米の防衛関連企業や防衛族議員と密接な関係を持つパイプ役とされ、自らが出資して米国法人「アドバック・インターナショナル・コーポレーション」(米ロサンゼルス)などを設立している。特捜部は昨年、前防衛事務次官の守屋武昌被告(63)の汚職事件に絡んで協会を捜索するとともに、米国法人の実態についても調べていた。

 関係者によると、複数の防衛関連メーカーや商社は、秋山氏の米国法人に対してコンサルタント業務などの名目で多額の資金を提供したほか、協会にも年会費を支払い、秋山氏側には04〜06年だけで約4億7000万円が渡ったとされる。経費などを差し引いた約1億5000万円は秋山氏個人の収入になったとみられるが、秋山氏は約2000万円の所得しか申告しておらず、差額の約1億3000万円を申告しなかった疑いもあるという。

 特捜部は、アドバック社などにコンサルタント料を支払っていた防衛関連企業から一斉に事情聴取し、秋山氏側に提供した資金の趣旨や支払いの経緯について詳しい説明を求めているとみられる。

 アドバック社の業務実態については、今年1月の参院外交防衛委員会の参考人質疑でも取り上げられた。「秋山氏が日米の軍事メーカーから受けるコンサルタント料の受取窓口の役割を果たしたのでは」と問われた秋山氏は「内容については守秘義務もありお答えしかねる」と述べ、明確な説明を避けている。

 ◇日米交流協会員企業が次々退会

 日米平和・文化交流協会のほぼ全会員企業が協会を退会したか、今後退会する方針であることが分かった。「コンプライアンス(法令順守)上の問題」(NEC)などとしており、専務理事の秋山直紀氏を巡る疑惑の捜査が引き金になった形だ。

 会は個人会員と法人会員で構成。関係者によると、このうち法人会員数は06年7月時点で17。このうちNECのほか▽川崎重工業▽住友商事▽三菱重工業▽東芝−−など14企業が既に退会した。神戸製鋼所も「退会の方向で検討中」としている。さらに大半の会員企業が協会に幹部を理事として派遣していたが、ほぼ全員が既に辞任したか辞任の予定。

 残る会員企業は秋山氏が運営に深く関与する米国法人「アドバック・インターナショナル・コーポレーション」と同「カウンシルフォーナショナルセキュリティ」の二つだけ。年間約50万円の会費を払い、協会を支えた企業のほとんどが会を去った形になっている。【石川淳一】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080510-00000013-mai-soci