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2008年05月09日(金) 05時52分

原野商法被害者詐欺  被害 全国に拡大読売新聞

都内の事務所から任意同行される北村容疑者(左から2人目)=福田麻衣撮影

 原野商法の被害者らから金をだまし取っていた東京都大田区の不動産会社「ワールドリゾート」の社長が8日、県警に詐欺容疑で逮捕された。特定商取引法違反(不実の告知)容疑で捜索に踏み切ってから約2か月。被害者は県内の約10人を含め、全国で約450人に上るとみられ、県警は事件の全容解明を進める。

 同社が入る大田区のビルにはこの日、午前7時前に捜査員が到着。同社社長の北村一富容疑者(57)(横浜市都筑区)は午後3時40分ごろ、スーツにネクタイ姿でビルから現れ、捜査員に任意同行を求められた。

 捜査幹部によると、北村容疑者は従業員とともに、さいたま市と東京都江戸川区に住む男性2人(ともに70歳代)から土地の測量代として計約80万円をだまし取った疑い。北村容疑者は容疑を認めているという。

 これまでの捜査で県警は約130人、総額約8500万円の被害を裏付けている。捜索で押収した原野商法の被害者や山林所有者の名簿を分析した結果、このほかに約320人の被害者がおり、県警では計2億数千万円がだまし取られていたとみている。

   ■山林「1500万で売りませんか」

     言葉巧み 詳細見積書

 久喜市に住む60歳代の男性宅に「ワールドリゾート」から1枚の往復はがきが届いたのは2006年11月。「当社に売買並びに測量・境界線の承諾等の依頼が入っております」と記されていた。別荘を建てるため15年前に700万円で購入以来、手つかずになっていた福島県内の山林住所が地番まで詳しく書いてあった。

 「あの土地を本当にほしい人がいるのか」。疑問に思いながらも、はがきに書かれた連絡先に電話すると、「菅原」と名乗る男が「1500万円で売りませんか」と丁寧な言葉遣いでゆっくりと話し始めた。男性は売却する意思を伝えた。

 数日後、測量の見積書が郵送で届いた。「面積測量工事費」「境界標埋設工事費」など難解な用語が並べられ、請求額は計84万円。「だまされているのかも」との不安がよぎった。

 そこで男性は支払う前に、〈1〉売買契約を速やかに成立させる〈2〉交渉が失敗した場合、測量代を返還するか土地を買い取る——ことを求め、会社側と「確約書」を交わした。

 しかし、安心して金を指定口座に振り込んだ途端、担当者と連絡がとれなくなった。電話がつながっても、社長や社員を名乗る男が入れ替わり出て「測量はまだ終わってません」「返す金が今は手元にありません」などと、あやふやな答えを繰り返した。金を振り込んでから約3か月後、インターネットで同社を巡るトラブルを知り、だまされたことに気付いた。

 「やつらはプロ。常に丁寧な言葉で対応し、脅すようなことは一切なかった。信用してしまった」と、男性は肩を落とした。手元に残ったのは、同社が送りつけてきた偽の見積書や確約書だけだった。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news/20080508-OYT8T00877.htm