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2008年05月07日(水) 22時00分

弁護士過疎の離島で「島弁」 四谷の36歳、伊豆・小笠原諸島で7年間産経新聞

 弁護士が1人もいない“弁護士過疎地”の伊豆諸島・小笠原諸島で、7年間にわたり法律相談を行っている弁護士がいる。東京・四谷に事務所を構える小海範亮(こかい・のりあき)弁護士(36)。費用はほぼ自己負担で、渡航はすでに60回以上に及ぶ。「離島の住民の不利益を見過ごせない」と、都心に拠点を置きながら「島弁」としての活動を続けている。
 都には11の有人島があるが、伊豆大島、新島、八丈島に家庭裁判所の出張所と簡易裁判所があるだけで、他の島には裁判所の施設がなく、弁護士もいない。しかし、法律問題がゼロというわけではない。相続、離婚…。住民が裁判に巻き込まれるケースもあり、本土の弁護士に相談し、東京・霞が関の本庁に足を伸ばさなければならず、金銭的にも身体的にも大きな負担となる。
 小海弁護士が離島で活動を始めたのは、若手の弁護士有志が小笠原諸島で法律相談を企画したことがきっかけだった。「東京の弁護士として離島の住民の不利益を見過ごしていていいのか」と思い、すぐに参加を希望。平成13年2月に初めての法律相談を行った。
 しかし、1回の相談だけで解決できるケースはほとんどなく、「定期的な法律相談が必要」と実感した。以来、1〜2カ月に1回程度、都内の離島を回るようになり、7年余りで11の有人島すべてで法律相談を行った。昨年11月からは、離島での活動をつづった「島弁日記」をインターネット上で公開している。
 活動を通して離島ならではの問題点を痛感した。人口の少なさや土地の狭さから、トラブルがすぐに周知の事実になってしまう独特の環境があり、裁判を敬遠する住民は多い。「当事者や周囲の理解を得て、裁判になる前に問題を解決させる必要も出てくる」。模擬裁判を通して、裁判や法律への理解を深めてもらう取り組みも行っている。
 近年は東京の3弁護士会も離島で法律相談を行っているが、実施している島の数は限られ、回数も少なく、住民の要請に十分に応えているとはいえない。
 小海弁護士は「何度も通うことで、住民の信頼を得ることができた。いまでは住民側から積極的に相談してくることもある。常駐はできないが、住民の生活の助けになれば」と話している。

 ■弁護士過疎 全国に253カ所ある地裁・地裁支部の管轄地域のうち、平成20年4月1日現在で弁護士が全くいない地域は2。1人しかいない地域は22。これらは合わせて「ゼロワン地域」と呼ばれる。また、東京都には11の有人島があるが、常駐する弁護士はいない。日弁連ではゼロワン地域の解消とともに、全国に117カ所ある弁護士1人あたりの人口が3万人を超える地域(20年4月1日現在)の解消を目指している。

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