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2008年05月06日(火) 01時33分

児童ポルノ 「単純所持」も禁止すべきだ(5月6日付・読売社説)読売新聞

 子どもたちを犯罪被害から守るためには、法規制の強化を躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。

 児童買春・児童ポルノ禁止法の改正に向けて、与党のプロジェクトチームが検討作業を進めている。

 この法律は、1999年に議員立法として制定された。18歳未満の児童の「性欲を興奮させまたは刺激する」全半裸の画像を提供することなどを禁止している。

 与党チームは、児童ポルノを個人的に収集する「単純所持」についても新たに禁止し、罰則を盛り込む方針を打ち出した。

 「単純所持」の禁止の議論は法制定の際にもあったが、「所有者のプライバシーへの配慮」や「捜査権の乱用への懸念」から、見送られた。

 しかし、インターネットの普及で児童ポルノの拡散が急速に進む中で、先進国は規制の強化に乗り出している。「単純所持」を禁止していないのは、主要8か国(G8)では日本とロシアだけだ。

 シーファー駐日アメリカ大使は鳩山法相に「単純所持」禁止への期待を表明している。

 日本で「単純所持」が認められていることが、国際捜査協力を進める上で支障になっている。

 いったん流出した画像の回収は困難だ。性的な暴行を受けた上、現場を撮影された子どもたちは、生涯にわたって深い心の傷を負い続けることになる。

 “マニア”による凄惨(せいさん)な女児誘拐殺害事件があった奈良県では、3年前に県条例が制定され、13歳未満の子どものポルノの単純所持が禁止された。

 内閣府が昨年行った世論調査では、90%の人が児童ポルノの「単純所持」の規制に賛成している。機は既に熟している。

 与党チームは、児童ポルノサイトへの接続をプロバイダーが自ら遮断する「ブロッキング」制度も導入する方針だ。

 児童ポルノに類した漫画やアニメ、コンピューターグラフィックス(CG)についても規制すべきだという議論が一部にある。

 アメリカやフランスでは、これらも規制の対象となっている。一方イギリスでは、CGのみを禁止し、アニメとコミックは対象外にするなど、国によって対応に若干ばらつきがある。

 こうした規制については、「表現の自由」の問題もあり、慎重な議論が必要だろう。

 まずは「単純所持」の禁止とブロッキング制度導入に焦点を絞って、法改正を検討すべきだ。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080505-OYT1T00530.htm