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2008年05月05日(月) 03時01分

新高齢者医療 低所得の75歳以上夫婦、負担増も朝日新聞

 75歳以上が対象の後期高齢者医療制度で、4月に国民健康保険から移った低所得の夫婦世帯の相当数で保険料負担が増えた可能性が高いことが分かった。厚生労働省はこれまで、加入者の5割を対象に試算した結果をもとに、「低所得者は負担が軽くなる」と説明してきた。

  

 東京都区部や名古屋市などでは、低所得者の保険料が新制度に移って大幅に増えており、厚労省の説明に疑問を示す声もあった。厚労省は近く、保険料負担の変化の全体状況を把握するため、試算方法を見直す。

 国民健康保険(国保)の保険料の算定方式は三つあり、運営主体の市区町村が、どれを使うかを決める。厚労省はこのうち加入者の半数に適用されていた方式に基づいて試算。各種控除をした後の課税所得がゼロの夫婦世帯の保険料は、国保では年額4万円だったが、新制度では年額2万5千円に減るとしていた。

 別の二つの方式で計算すると、国保の保険料は2万4100円、2万500円となり、新制度移行後は、それぞれ900円、4500円の負担増となる。この結果を厚労省も認めている。

 75歳以上の国保加入者は890万人で、うち半数以上の490万人が課税所得ゼロだ。厚労省試算とは別の二つの方式に加入していた人は相当数いると見られる。

 国保の保険料は、所得や世帯人数に応じて算出され、課税所得がゼロの世帯は所得分はゼロとなる。方式によって加入世帯ごとに負担する定額分や、持ち家などの所有資産に応じた分が加算される。厚労省が試算に使った方式は、他の2方式と比べて、低所得者世帯の保険料が高くなる傾向があり、この方式の試算結果を示して「低所得者は負担が軽くなる」と広報してきた。

 厚労省は「一般的な傾向をみるため、一番対象者の多い方式で試算した。近く、他の方式でも試算する」という。

 ただ、厚労省の試算に使われた方式でも、所有資産がない人は負担増になる。

 一方、所得がない単身者の場合、負担減の人が多いと見られる。厚労省試算の方式では3万3100円、別の2方式では1万5900円、1万300円となる。新制度の保険料は1万2500円。

 各方式の保険料額は全体的な傾向を示すもので、実際にどれだけの低所得者が負担増になったかを把握するには、各市区町村ごとの実態調査が必要だ。厚労省と総務省は6月半ばまでに調査を実施する方針だが、実際に負担増となった高齢者が多数いることが判明すれば、保険料の軽減措置を求められそうだ。(太田啓之) アサヒ・コムトップへ

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