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2008年05月04日(日) 11時11分

田園の死角突く凶行 愛知・豊田の高1女子殺害東京新聞

 「無事でいて」。家族の思いは無残に打ち砕かれた。愛知県豊田市の田んぼで3日早朝、愛知教育大付属高校1年の清水愛美(まなみ)さん(15)が殺されているのが見つかった事件。家族や知り合いが夜通しで捜したが、見つかったのは変わり果てた姿だった。だれが、なぜ…。看護師にあこがれ、責任感が強かったという愛美さんの突然の死に、家族や友人らは悲しみにうちひしがれた。

 遺体が見つかった田はブルーシートですっぽり覆われ、捜査員が頻繁に出入り。同じクラスという女子高生(15)は近くで手を合わせた。「涙が止まらなかった。愛美ちゃんの分も笑顔で過ごすから見守っていてねと祈った」と、泣き疲れた様子で話した。

 現場は田畑が続く一帯で人通りも少ない。近所の男性会社員(66)は「夜だと暗くて男性でも通るのは怖いくらい」。近所の男性(49)は「(被害者より)1つ年下の娘がいるが夜に帰宅するので心配。人ごとじゃない」と不安げに話した。

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 現場は学校から約3キロの地点で、清水さんが通学路にしていた道路の脇。自宅まで残り約1キロだった。

 のどかな田園風景に潜んだ死角ともいえる場所で、近くの民家からは数十メートル離れている。悲鳴も周囲には届かない可能性が高い。伊勢湾岸自動車道の真下を道路が走るが、高架が死角になって歩道側は見えにくい。

 愛知教育大付属高は3日、午前8時30分から3年生対象の模擬試験があり130人が登校してきたが、試験を中断した。

 同校の通学路周辺では4月に不審者情報が相次いだ。中旬には下校時の女子生徒が体に触られそうになった。30日には下半身を見せる男も現れ、警察に通報。文書を校内に張り出したりして注意を呼び掛けていた。

◆取材自粛を要請

 清水愛美さんの父親の力さんは3日夜、報道陣に「私たち遺族は今深い悲しみの中におります。気持ちを察し取材を差し控えていただきたく思います」との文書を公表した。

◆夢は母のような看護師

 2日夕方、清水さんはサッカー部が練習する愛知教育大付属高(愛知県刈谷市)のグラウンドにいた。ウオータークーラーで水をくんだり、外に飛んできたボールを拾ったり。いつもとまったく変わらない様子だったという。「まさかこんなことになるなんて…」。サッカー部の男子生徒が声を詰まらせた。

 友人が多く、ホームルーム委員も務めるクラスの明るい人気者。山本建一副校長は「入学してまだ3週間あまり。聡明(そうめい)で優秀な生徒だったのに…」。

 責任感も強く、3月に卒業した豊田市立前林中学校では文化祭の司会や生徒会副会長を務めた。

 中3の合唱コンクールでは指揮を担当。小中学の同級生(15)は「みんなの前ではいつも笑顔で、人から恨まれるようなことはない」と目を真っ赤にした。日々の思いや出来事などをつづったブログには「病院で働くっ」と、看護師になる夢も書き込まれていた。「尊敬する人」は、看護師として働く母親。「看護師さんだから(母に)あこがれる。好きな事、がんばれる人は尊敬できる」とあった。

(中日新聞、東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008050490071845.html