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2008年05月03日(土) 00時00分

SNS 成長に陰り読売新聞

 インターネットを通じて会員同士が交流できる「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」(SNS)の成長に陰りが出ている。

 会員が個人情報の公開を制限する動きを強め、「旧友と再会できる」といった本来の魅力が薄れているためだ。犯罪に

悪用されるケースも後を絶たず、社会的なイメージも低下している。SNS各社はゲームや音楽サービスを強化するなど、利用者の拡大に懸命だ。(山本貴徳、河野越男)

個人情報漏れや犯罪の懸念

 最大手のミクシィは、2007年10〜12月の利用回数が約361億回と7〜9月に比べて6億回減り、四半期ベースで初のマイナスとなった。

 サービスを3日以上利用しなかった会員の割合も約42%にのぼり、06年7〜9月の約30%から10ポイント以上も上昇している。

 ミクシィは06年12月、個人情報保護のため、名前や性別を全会員に公開する仕組みを改め、公開する範囲を〈1〉指定した友人〈2〉友人の友人〈3〉全会員——から選べるようにした。その結果、「昔の同級生をミクシィで捜してもなかなか見つからない」などと利便性が低下し、利用の減少につながっている。

 SNSを使った犯罪が相次いでいることも、足を引っ張っている。07年11月には、青森県の女子高生が中高生に人気の「モバゲータウン」で知り合ったとみられる男に殺害された。携帯電話各社が青少年に有害サイトを閲覧させない「フィルタリング(選別)サービス」では、多くのSNSサイトが「有害」と分類されている。

 こうした逆風の中、各社はサービス強化でてこ入れを図ろうと懸命だ。ミクシィは07年12月、携帯電話で無料ゲームを楽しめるようにした。モバゲータウンも今年夏以降、スクウェア・エニックスなどゲーム大手と協力し、ゲームの配信に乗り出す。

 野村総合研究所の山崎秀夫上席研究員は「ネットを活発に使う人は、すでにSNSの会員になっている。業界全体の急激な伸びは難しい」と指摘するなど、各社は市場が成熟した中で、新たな生き残り戦略を求められている。

ミクシィ社長に聞く

 SNS最大手ミクシィの笠原健治社長=写真=は読売新聞のインタビューに応じ、会員間の交流を促す新たな仕組みを年内に導入するなどして、会員を現在(約1300万人)の2倍程度に増やす方針を示した。

 ——サービス開始から4年経過した。

 「個人情報保護の意識が広がって、会員が自分の名前やプロフィル(経歴)をあまり公開しなくなり、最近加入した人は昔の同級生などを捜しにくくなった。ミクシィが提供する『コミュニケーションのインフラ(基盤)』機能が弱くなっている」

 ——具体的な対策は。

 「会員が捜している相手が名前を公開していない場合、会員から『あなたを捜しています』というメールを取り次ぎ、相手が承諾すれば交流できるシステムを導入する。年内には実施したい。会員の分類も、『○○高校の第何期生の何組』などと細かくして、同窓生を捜しやすくすることも検討している」

 ——会員数の目標は。

 「韓国では、20歳代の90%が韓国SNS最大手のサイワールドを利用しているという。ミクシィは日本の20歳代のうち約50%の利用率で、30歳代の普及率も低い。本来の強みを発揮すれば、2500万〜3000万人まで増える可能性はある」

 ——有害サイトが犯罪の温床となるなど、ネットの「負の側面」が社会問題化している。

 「18歳以上という会員資格を変えないのは、未成年者が事件に巻き込まれる危険性が大きいという面もある。未成年者向けの情報は、部分的に遮断した方が良いと思う」

 「ただ、過度な規制は、情報の真偽や重要性を見抜くなどといった利用者の能力を低下させる恐れがある。事業者間の競争も抑制してしまう」

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20080507nt09.htm