記事登録
2008年05月03日(土) 02時09分

佐賀の患者人違い射殺 被告「企業舎弟と情報」朝日新聞

 佐賀県武雄市の病院で入院患者の宮元洋さん(当時34)を暴力団関係者と間違えて射殺したとして、殺人罪などに問われた指定暴力団・道仁会組員、今田文雄被告(61)の公判が1日、佐賀地裁であった。今田被告は、宮元さんを「企業舎弟」だとする情報を覚せい剤密売場で知り合った女性から得たと説明した。

 被告人質問で今田被告は、昨年8月に恩義のあった道仁会会長(当時)が射殺された報復として、対立する九州誠道会の幹部の殺害を1人で計画した、と動機を述べた。

 被告は、狙撃できる相手の情報を得ようと覚せい剤密売スポットに出入りし、そこで知り合った女性から誠道会系暴力団関係者2人の入院情報を入手。うち1人が「宮元さんだった」と説明した。

 犯行当日、病室の扉を開けると「窓際にいた男性に大声で怒鳴られ、暴力団関係者と確信して」拳銃を2発撃ったと説明。ベッド下に逃げた宮元さんをさらに2発撃った理由は「(反撃の)道具を取りにいったと思った」とした。

 隣室の患者は銃声の前に怒声を聞いていない、と検察側に疑問点を指摘されたが、「聞こえた」と反論した。

 この日は宮元さんの妻、篤紀さん(36)も意見陳述に立った。「法で人の命が奪われることは望まない」と前置きし、「無期懲役の判決でも模範囚なら数年後に出所でき、抗争の英雄として大手を振って歩き回ることが許されれば、他のヤクザもこれをまねる。社会に二度と出てこないことが確約されている刑が死刑しかないなら、選択肢は死刑しかない」と訴えた。

 今田被告は初公判同様、「すみませんでした」などと遺族に謝罪を繰り返したが、検察側に「宮元さんを今でも(誠道会系の)企業舎弟だと思っているか」と問われると「思っている」と即答した。

 篤紀さんは「企業舎弟のような暮らしはしていない」と全面否定。検察側も公判後の記者会見で「今田被告の発言は荒唐無稽(こうとうむけい)で、宮元さんが企業舎弟でないことは客観的に明白」と言い切った。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0502/SEB200805010019.html