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2008年05月03日(土) 14時12分

「調理場はみんな知っていた」船場吉兆の使い回し朝日新聞

 高級料亭の「逸品」として出された料理は、別の客の食べ残しだった——。産地偽装事件の捜査が続く大阪市の船場吉兆で、客の信頼を裏切る行為がまた発覚した。営業再開から3カ月。客からは「信じられない」との声が上がった。

 「(使い回しは)昨年まで事実であったことを認めます。二度とこのようなことはいたしません」。2日夜、料理長を務める山中啓司取締役が本店の正面玄関に現れ、何度も頭を下げた。

 使い回しはどのように行われたのか——。山中取締役は「(客が)一切手をつけていなかった時に限って再び加熱調理をした。料理人が味見をし、もう一度出すと判断することもあった」と説明した。

 こうした実態については「調理場ではほとんど全員が知っていた」といい、「やっちゃいけないことをやっていたという意識があった」と当時を振り返った。湯木正徳・前社長の指示で6〜7年前から繰り返すようになったことを認め、「前社長に(やめるよう)忠言をしたことはあったが、どこまで聞き入れてもらったかは分からない」と額の汗をぬぐった。

 前社長の妻で女将(おかみ)の佐知子社長は、この日は報道陣の前に姿を見せなかった。社長は使い回しを知っていたのかとの問いに、山中取締役は「分かりかねる」と答えた。偽装事件を受けて昨年12月に農林水産省に出した改善報告書に使い回しを盛り込まなかったことについては、「一切ないと言い切れる状態になって再開したので(報告書に)出さなかったと思う」と述べた。

 この日、船場吉兆は通常通り営業した。夜の唯一の予約客だった札幌市の会社員滝口百合子さん(59)は「連休を利用して友人らと大阪に来ました。吉兆が旅行のメーンイベントで、すごく楽しみにしていたのに信じられない」と驚いていた。

 船場吉兆は今年1月、再発防止と信頼回復を約束して本店の営業を再開した。吉兆グループの関係者は「料理の使い回しなんて考えられない」としたうえで、「また(騒ぎが)ぶり返すのか。やっと落ち着いたところだったのに」と声を落とした。

http://www.asahi.com/kansai/sumai/news/OSK200805020078.html