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2008年05月02日(金) 09時34分

テイクアウト中心「紅茶専門店」は成功するか? ——紅茶エスプレッソカフェ「ハッティー」Business Media 誠

 デパートなどにレストランや生活雑貨店を出店するゆとりの空間は4月30日、「手軽に楽しむ上質な紅茶」をコンセプトに、紅茶専門店「tea espresso HATEA(ハッティー)」の第1号店を東京・恵比寿に開店した。

【画像:紅茶&フードメニュー、店内】 ほか

 「ハッティー(HATEA)」とは、象を意味するヒンズー語「ハッティー(HATHI)」と「ティー(TEA)」を合わせたもの。「ハッピーなティータイムを」という意味も込めたという。紅茶葉を運ぶ象は、同店のシンボルマークにもなっている。

 ハッティーでは気軽に立ち寄れてテイクアウトもできる、カジュアルなカフェ形態を採用した。スターバックスなど既存カフェの紅茶版といったところだ。料理家で同社社長の栗原心平氏は、価格・雰囲気とも「従来のティーサロンにありがちな入りにくさを払拭するため」と話す。

 価格は主力商品の「ティーエスプレッソ(ホットのみ)」のシングルが290円、ダブルが340円。同じく「ティーラテ(ホット・アイス)」のSサイズが330円、Mサイズが380円、Lサイズが430円など「気軽に来店できる設定」だ。イートインとテイクアウトの顧客比率は65対35を想定しているという。

●注文からわずか90秒程度で、本格的な紅茶が味わえる

 最大のこだわりは、コーヒー用のエスプレッソマシンで高濃度の紅茶エキス「ティーエスプレッソ」をベースにしていること。えぐみや渋みを取り除き、独特の酸味を効かせたこのベースに、プラスアルファを合わせてドリンクメニューを構成する。

 例えば「ティーラテ」はミルクを、「ティートニック(アイスのみ、S340円、M390円、L440円)」は炭酸水を、「コンフィチュールティーラテ(ホット・アイス、S420円、M470円、L520円)」はコンフィチュール(ジャム)とミルクをそれぞれ加えたものだ。

 そのほか、「女性に人気」だというスパイシーな「ジンジャーチャイ(ホット・アイス、S360円、M410円、L460円)」「シナモンチャイ(同)」、キャラメル風味のティーエスプレッソがベースの「キャラメルフレーバー ティーラテ(ホット・アイス、S350円、M400円、L450円)」などがある。

 スピードにもこだわった。注文してから口にできるまでの時間が約90秒と、少なくとも3分はかかってしまう既存の紅茶専門店より圧倒的に短い。

●茶葉を3分以上蒸らす、伝統的な淹れ方が紅茶カフェ出店を妨げた!?

 紅茶専門店では本場イギリスの正式な紅茶の淹れ方を採用している場合が多い。これは葉の大きさにもよるが、まずティーポットに入った熱湯の中で3分以上葉っぱを蒸らす。そして広がった葉から十分に味を引き出せてからティーカップに1杯分の紅茶を注ぐというものだ。

 この方法ならティーバッグに閉じ込められた茶葉と違い、紅茶のうまみを最大限に引き出すことができる。しかし手間がかかるうえ、1口目を飲むまでに準備開始から3分は必要だ。これでは気軽に楽しみたい人や時間がない人の足は遠のくだろう。かと言って手軽なティーバッグは品質に限界がある。

 つまり本格的に紅茶を味わうには、茶葉を十分に開かせる必要上「すぐ」とはなりづらい。街に本格コーヒーを手軽に楽しめるカフェがひしめく一方、紅茶のカフェはほぼない背景に、こうした茶葉事情が大きなウエイトを占めていることに目をつけた同社が、問題解決に乗り出した。

 「もっと手軽に紅茶を楽しみたいという潜在ニーズのあることが、事前調査で分かった」と栗原氏。本格紅茶をすばやく提供することでニーズを満たせないだろうか——。このとき同社が目を付けたのが、ある“秘密兵器”である。

●紅茶を淹れる“エスプレッソマシン”は「世界初」(栗原氏)

 秘密兵器とは、「紅茶用に改良したコーヒー用エスプレッソマシン」。栗原氏によれば、「世界初」だという。業務用エスプレッソマシンは浸透圧の力を利用して、焙煎したコーヒーの濃縮エキスを抽出するもので、あくまでコーヒー用だ。

 同社はこの機械のフィルター部に独自の工夫を施し、オリジナルマシンに改良。さらに主な茶葉3種をさまざまな配合でブレンドしたり、茶葉を砕くサイズを変えたりと、試行錯誤を繰り返した。理想の配合と茶葉サイズにたどり着くまで「1年半かかった」(栗原氏)という。

 こうして同社がコーヒー用のエスプレッソマシンのフィルターを工夫して、紅茶用のエスプレッソマシンを作った結果、手軽に本格的な紅茶が提供できるようになった。

●ひじきにがんも、紅茶と相性がいい充実のフードメニュー

 また、同店では「紅茶と相性がいい」という豊富なフードメニューをそろえる。自家製メニューの「豆腐とひじきのがんもサンド(460円)」を試食したところ、やさしい味付けのがんもが実にジューシーで、非常においしかった。一緒に飲んだ「ティーラテ」が、ほんのりやさしい味わいだったことを考えると確かに相性もいい。

 筆者は週2回はコーヒー系の既存カフェに通っている。これはあくまで個人の感覚だが、どの店のフードも、パサパサしていたり味が濃かったり具がお情け程度の量だったりと、「とりあえずメニューとして置いてます」感のある店が少なくない。それだけに試食したサンドイッチのおいしさに驚いた。

 ハッティーでは、今年中に都内でもう2店舗増やす予定で、5年以内に30店舗まで拡大する計画を立てているという。象のような足取りで、のっしのっしと既存カフェ業界を揺るがすことになるかならないか——。動向が楽しみだ。

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