記事登録
2008年05月02日(金) 21時31分

<船場吉兆>客の残した料理を使い回し アユ塩焼きなど6種毎日新聞

 高級料亭「船場吉兆」(大阪市)が客の残したアユの塩焼きなど料理6種類を捨てずに別の客に回していたとして、大阪市保健所は2日、本店を立ち入り調査をした。船場吉兆側は「昨年11月の営業自粛前まで使い回しをしていた」と認めているという。食品衛生法には問われないものの、保健所は「健康被害を招きかねず、今後、使い回しはあってはならない」と口頭で指導した。

 船場吉兆を巡っては、大阪府警が既に、佐賀、鹿児島両県産牛肉を但馬牛などと偽装したとする不正競争防止法違反容疑で家宅捜索を実施。湯木正徳前社長(74)と長男の喜久郎前取締役(45)らの書類送検に向け、詰めの捜査をしている。

 保健所の調査では、使い回していた料理は、アユ塩焼き▽稚アユ素揚げ▽ゴボウをウナギで巻いた「八幡巻き」▽エビのすり身とキスを合わせた「エビキス」▽サーモンの焼き物▽刺し身の添え物のゼラチン−−の計6種。本店で、急に客が増えた時に使い回しをしており、添え物以外は再加熱していたという。

 船場吉兆は「今年1月の営業再開後はしていない」と説明。取締役の山中啓司料理長(47)は保健所に対し「当時は社長の言うことを100%聞かざるを得なかったので、不適切と思いつつも、応じていた」と話しているという。

 保健所は、健康を損なう恐れはないため食品衛生法には問えないとしている。その上で「食品の提供者として、食の安心、安全が問われている中、このようなことはあってはならない」と指導した。

 船場吉兆は昨年9月以降、食品の表示偽装が次々と明らかになり、今年1月に民事再生法適用を申請。当時の正徳社長ら旧経営陣が辞任し、正徳社長の妻で女将(おかみ)の佐知子取締役(71)を新社長にして営業を再開している。【久木田照子】

 ◇「2週間に1度程度…」 料理長は言葉濁す

 「まだきれいなものを、もったいない精神と言いますか、見るからに使えそうなものであれば、足りなくなった時、お出ししたりした」。大阪市保健所が調査に入った後、山中啓司料理長(47)は報道陣の取材に応じ、こう釈明した。「社長の指示は断れなかったのか」という質問には、「社員という立場で。情けない話ですが……」とうつむいた。

 使い回しの頻度は「2週間に1度程度くらいか」と言葉を濁した。「(食材の)数が1、2本足りなくなった時に、そういうことがあったと記憶している。お客様に出した状態のままで調理場に下がってきた時のみ、状態を見極め使い回しをした」と客が手を付けてない料理だけ使い回していた点を強調。「調理場の人間はみんな知っていた」と話した。

 船場吉兆を巡る不祥事は昨年9月に発覚。その後、今年1月に民事再生法の適用を申請して、再出発を図っているが、今回の使い回しはこれまで一切明らかにしていなかった。

 山中料理長は今年1月、旧経営陣辞任後の新体制で取締役に就任していた。【久木田照子】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080502-00000141-mai-soci