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2008年05月01日(木) 15時01分

<暫定税率>越後交通も会員の長岡商議所が「撤廃」要望毎日新聞

 故・田中角栄元首相が社長を務めたバス会社「越後交通」(新潟県長岡市)を会員とする長岡商工会議所が昨年末、ガソリン税の暫定税率撤廃を県出身の与野党国会議員に要望していたことが分かった。道路整備の遅れにつながるとして、地方では税率維持を求める声が強い中での異例の要望。原油高騰が運輸業者などの経営を圧迫していることが背景にある。暫定税率を導入した元首相のおひざ元で、土建政治が揺らいでいる。

 路線バスを運行する越後交通は田中元首相のファミリー企業として成長。長女の田中真紀子元外相が相談役、夫の田中直紀・自民党参院議員が会長を務める。長岡商議所(昨年3月現在2253社)の中心的存在で、運送やタクシー業者など127社で作る運輸・交通部会のトップ企業。

 商議所は昨年12月下旬、田中夫妻のほか自民党3人、民主党1人にエネルギー外交強化や石油の安定供給を文書で要望した。その際、運輸・交通部会の意見として「原油価格が安定するまで税率を下げないと、地元の中小運輸業者は生きていけない」と暫定税率の撤廃を求めた。

 昨夏までは暫定税率が支える道路特定財源の堅持を訴えていた。だが、昨年末の企業アンケートでは「原油高で原材料や商品の仕入れ価格が上昇した」との回答は90%で、2年前の調査の69%から大幅に上昇。「経営を圧迫している」も64%から82%に上がった。

 樋口栄治専務理事は「道路は地方の生命線との認識でやってきたが、昨秋風向きが変わった。これ以上高騰すれば地方の商工業が成り立たないという声が形になった」と話す。一方、要望を受けた自民党の長島忠美衆院議員(比例北陸信越)は「暫定税率は維持し、原油高対策を別にとるべきだ」と戸惑う。

 道路特定財源制度を作ったのも田中元首相だ。議員立法の「道路整備費の財源等に関する臨時措置法案」として53年に成立。74年からの暫定税率と共に「田中土建政治」の屋台骨だった。越後交通幹部は「要望は事実だがコメントは差し控える」と話している。【井上英介、長野宏美】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080501-00000053-mai-pol