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2008年04月30日(水) 03時01分

硫化水素自殺防げ 薬剤業界、販売自粛検討朝日新聞

 硫化水素による自殺が止まらない。29日も死者が相次いだ。どうすれば自殺に向かおうとする人を引きとめられるのか。周囲の人の「巻き添え」はどう防げばいいのか。模索が始まっている。

 《硫化水素、ドク、死ぬぞ》。29日午前、栃木県足利市のアパートのドアにあった張り紙の文言だ。午後には、宮崎県延岡市のワンルームマンションの浴室に《硫化水素発生中。絶対に開けないでください》と書かれた紙が張ってあるのが見つかった。

 アパートの浴室には無職男性(34)、マンションの浴室には女子大学生(22)の遺体があった。いずれも近くに洗剤などの空容器が置かれており、硫化水素を発生させて自殺したとみられている。

 硫化水素による自殺の特徴は、手法が似通っていることだ。インターネット上の掲示板や自殺を扱うサイトで情報を得ている可能性が高い。

 神奈川県警サイバー犯罪対策センターは、今月からガスの発生方法を掲載したサイトを探し、運営者やプロバイダーに問題となる部分の削除を求めている。自殺しようとする人に情報が届かないようにするためだ。25日までの削除数は13件にのぼるという。

 プロバイダー大手「ニフティ」は、警察などから具体的な情報があった場合に限り、掲載者に記述の再考を促すメールを送っている。担当者は「表現や通信の自由を尊重する必要もある。一方的に削除できない」。こうした規制を免れるため洗剤の商品名の一部を変える書き込みもあり、「いたちごっこ」が続く。

 「自主規制」も始まった。ネット通販大手「アマゾンジャパン」のサイトでは今月中旬、洗剤などの販売を休止した。約2万3千店舗がネット上に出店する「楽天市場」でも、洗剤などの取り扱いを中止する店舗が出ている。

 全国医薬品小売商業組合連合会は、該当する商品の販売自粛を検討している。創業以来約100年、該当商品が主力だった中小メーカーは「このままでは死活問題。自殺方法を書いているネットには怒りを覚える」。商品の成分を変えるには多額の費用がかかるため難しいといい、今月末、「他のものとは絶対に混ぜないでください」と書いた赤字の注意を張った。幹部社員は「逆に混合を誘発することになりかねないと迷ったが、現状を考えて苦渋の決断をした」と話す。

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