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2008年04月30日(水) 13時03分

暫定税率:あす復活見通し 安いガソリン求め、給油所に長い列 /宮城毎日新聞

 ◇「政治に踊らされている」
 揮発油(ガソリン)税の暫定税率が来月から「復活」する見通しとなり、県内でも29日、安いガソリンを求めるドライバーが各地の給油所に列を作った。今月初めのガソリン騒動時には、暫定税率廃止前に仕入れたガソリンを自己負担で安く販売した給油所もあった。逆に5月1日以降、4月中に仕入れた「暫定税率抜き」のガソリンも値上げして販売する動きも出そうだ。わずか1カ月で価格が乱高下する事態に、給油所とドライバー双方から「政治に踊らされている」との声も上がっている。【青木純】
 利府街道(県道仙台松島線)沿いにある石油販売大手系列のガソリンスタンドでは、29日朝からひっきりなしに客が訪れ、たびたび順番待ちの車が車道にまで列をつくった。店員がスタンド内を走り回る傍らで男性店長(35)は「普段の1・5倍か、それ以上(の来客)」。
 この日のレギュラーガソリン1リットルの値段は123円だったが、暫定税率廃止で安く仕入れたガソリンが残っていた場合でも、5月1日から値上げする予定という。男性店長は「他店に対抗するため、高く仕入れたガソリンを4月1日から値下げしてしまった分、お客さんに負担してもらうしかない」といい、「税金がどうなるのか、こんなに不透明で良いはずがない。本当にいい迷惑です」とため息混じりに話した。
 近くにある別の石油元売り系列ガソリンスタンドの男性店長も「早めに値下げした分、早めに値上げしようかと考えている」としたうえで、「今日だけなら普段の2倍以上お客さんが来ているが、4月半ばはそれほど売り上げは良くなかった」と指摘。30日は通常1日1回来るタンクローリーに2回来てもらうよう手配したが、「夕方までに売り切れてしまうかも」と懸念する。
 各給油所では携行缶を持参し、ガソリンの「買いだめ」をするドライバーも目立った。ただ、セルフ給油所では客が自分で携行缶に入れることは認められていないため、店員が注意する場面も。同街道沿いのセルフ給油所の男性店員は「火災につながることもある。携行缶に入れようとするお客さんが絶えないので、注意して見ていなければ」と表情を引き締めた。
 ◇運送業界「値下げ効果ない」
 1カ月間で終わりそうな「ガソリン値下げ」は県民の家計や経済活動にどんな影響があったのか。「月に4〜5回入れるので、4月の家計は相当楽になった」(利府町の男性会社員)と喜ぶ声がある一方、燃料消費量が多い運送業界などからは「たいした変化はない」という冷めた反応も。
 トラック60台を所有する仙台市宮城野区の運送業・東北流通運送は1日からの値上げを見越し、運転手全員に「月末までに満タンにしておくように」と指示。同社は「経費が少し安くなるのは確かだが、燃料が売り切れる事態の方が心配。1カ月程度では、ほとんど効果はないと思う」。
 仙台市太白区の運転代行業・NK運転代行は、月平均120万〜130万円かかるガソリン代が、4月は100万円程度にとどまると試算する。だが、磯野博司会長は「ガソリンを満タンにすると車が重くなり、逆に燃費が悪くなる。世の中にはもっと大事な問題があるのに、なぜガソリンの値段で政治が大騒ぎするのか。普通に生活する人たちが政治に振り回され、踊らされたようにしか思えない」と苦言を呈した。

4月30日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080430-00000111-mailo-l04