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2008年04月29日(火) 06時15分

火災のソープ、違反あちこち 市消防局、改善見届けず朝日新聞

 札幌市の歓楽街・ススキノのソープランド「江戸城」で女性従業員と客の計3人が死亡した火事で、同店が防火扉の妨げになるような装飾物を置いたり、義務づけられた火災報知機の設備点検の報告をしなかったりと、消防法違反の行為を繰り返していたことが28日わかった。市消防局は店が善処するのを見届けないまま事実上放置していた。火事の際は火災報知機が作動しなかったという。ていねいに指導していれば惨事が防げた可能性もあり、批判が上がりそうだ。

一夜明け、市消防局と道警は出火原因を調べた=28日午後4時15分、札幌市中央区南6条西5丁目

火事を受け、市消防局の職員らがススキノ地区のソープランドに立ち入り、防火管理状況を調べた。計39店舗を30日までに調べるという=28日午後4時5分、札幌市中央区南5条西5丁目

 市消防局によると、同店は法令で義務付けられている自動火災報知機、避難誘導灯などの設備点検や避難訓練、防火訓練の実施報告をかねてしていなかったという。

 同店は火災時に閉じることによって延焼を防ぐ防火扉を各階の階段に設けていたが、扉の前には日本庭園を模した装飾を置いてあり、邪魔になっていたという。市消防局は昨年12月に文書で改善を指導したが、店は「担当者がいない」などと報告を怠っていたという。今回の火災でも各階の防火扉は閉じておらず、装飾物もそのままあったことが確認されたという。同局は「それが原因かどうかは定かでない」としている。

 同局は店への立ち入り検査を最近の6年間で5回実施。その都度、違反を指摘して改善を指導したというが、避難訓練などを実施したという届け出は06年以降一切無かったといい、同局は店が2年程度は避難訓練をしていなかったとみている。

 ただし、同局によると、消防として改善報告を提出するよう促したのは電話による2〜3回だけだった。違反すれば罰則がある措置命令を発動することも可能だったが「小規模な建物のため命令には至らなかった」と釈明している。28日の記者会見で「結果的に放置したことになるのではないか」と問われた藤吉茂・市中央消防署予防担当部長は「今後の教訓にしたい」と述べるにとどまった。

 札幌市内に全部で40店あるソープランドはススキノ地区に集中しているが、他店でも防火管理者を選任しないままだったり、防火設備を整えていなかったりする違反が多いという。藤吉部長は「より悪質な店への対応を優先した結果、催促が延びた面はある」と弁明した。同局は28日午後からソープランドの一斉立ち入り検査を緊急で始めた。30日までに状況を点検し、結果をまとめるとしている。

 火事は28日午前0時過ぎ、札幌市中央区南6条西5丁目の同店3階付近で発生。最上階の4階にいた同区の24歳と20歳の女性従業員、東京都墨田区の男性会社員(36)の計3人が一酸化炭素中毒で死亡した。店の本来の営業時間は午前0時までだった。

 札幌中央署の調べでは、出火場所は3階の備品庫とみられ、冷蔵庫の裏の焼け方が激しかったという。同署は業務上過失致死容疑での立件も視野に捜査を始めた。

 近くのソープランドで勤務中だった女性は「下半身にタオルを巻き、上着を羽織っただけの女の子数人が避難しているのが見えた。3人が心臓マッサージを受けながら運び出されていた」「ひとごととは思えない。連休の客足にも響きそうです」と話した。 アサヒ・コムトップへ

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