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2008年04月29日(火) 02時30分

<裁判員制度>被害者参加の模擬実施へ 最高裁が課題検証毎日新聞

 重大事件の刑事裁判に国民が参加する裁判員制度に向け、最高裁は、今年末までに始まる「被害者参加制度」を取り入れた模擬裁判を始めることを決めた。両制度は司法改革の大きな柱だが、日本弁護士連合会や一部の被害者団体は、裁判員が被害者の意見によって適正な判断を損なうのでは、と危ぶむ。最高裁は模擬裁判で検証を重ね、懸念を払しょくしていきたい考えだ。【北村和巳】

 被害者参加制度は、「刑事裁判で蚊帳の外に置かれてきた」との被害者の声を受け導入が決まった。来年5月開始の裁判員制度と同様、殺人など重大事件が対象で、検察官の隣に座った被害者・遺族が被告や情状証人に直接質問でき、量刑に関する意見も述べられる。

 日弁連は「一般市民の裁判員は被害者の意見に強く影響され、冷静な事実認定や公平な量刑に支障が出る可能性がある」と懸念を表明。交通事故遺族で「被害者と司法を考える会」代表の片山徒有さんも「被害者の悲しみの表明で刑の重さが変わるのは安易だ」と批判的で、制度検証のため最高裁などに模擬裁判の実施を求めていた。

 模擬裁判では、飲酒して正常な運転が困難な状態でハンドルを握った男性被告が、居眠りして対向車に衝突し運転手を死なせたとして、危険運転致死罪に問われた事件を取り上げる。実在の事件をもとに作成したシナリオで、被告は罪を認めており量刑判断がテーマ。被害者の支援活動をしている弁護士らに遺族役として模擬裁判に参加してもらい▽遺族の強い姿勢の質問に影響されないか▽量刑に関する意見を、どの程度まで反映させるか▽量刑判断にばらつきはでるのかなどを検証する方針。

 模擬裁判は千葉地裁が5月下旬に実施し、前橋地裁が6月、東京地裁が7月に行う予定で、ほかの地裁もそれ以降、順次実施していく。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080429-00000012-mai-soci