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2008年04月28日(月) 16時37分

カルーセル麻紀さん、美の秘訣を明かすオーマイニュース

 2007年11月に、京都大学の山中伸弥教授(45)がヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)の作製に成功したと発表して以来、体外で培養した細胞を移植し臓器の修復や回復を目指すという、いわゆる「再生医療」について、注目が続いている。

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 またこの4月に入ってからは、ドイツの製薬会社・バイエル薬品(大阪市)の研究チームが、山中教授らより早く昨年の春ごろにはiPS細胞の作製に成功していた、という報道もあった。山中教授側が基本特許は先に申請しているとはいえ、もし外国企業であるバイエル社のほうが医療技術として山中教授より先に特許を取得した場合、医療費が割高になったりしてしまうなど日本の医療に大きな影響が出る可能性も出てくる。

 山中教授が発表すると同時に「ノーベル賞級の快挙」と称されたこのiPS細胞。ヒトの皮膚の細胞に数種類の遺伝子を導入し、成長をリセットさせて、さまざまな組織に成長できる万能細胞だ。患者の体細胞を使えば拒絶反応が起きない。皮膚だけでなく、傷んだ臓器の再生もできる。また、その以前に作製された同様の万能細胞で、受精卵を壊して作るES細胞と比べれば、倫理的な面からも期待ができる。

 とはいえ、今回の特許の問題があらわすように、まだまだ一般的な技術とはいえない。

■再生医療技術は実用化段階に

 「医学的な研究として優れた業績であるのは間違いないが、臨床の医療技術に応用されるまでにはまだまだ時間がかかります。また、(ES細胞ほどではないとはいえ)遺伝子操作を前提としているので、やはり法律的な制約を受けることも考えられるでしょう」

 こう語るのは、名古屋大学大学院医学系研究科の上田実教授(58)。自己の表皮を培養したやけど治療用の細胞シートへの技術提供や、抜けた乳歯や親知らずを使った歯幹細胞による再生医療の研究などで知られている。

 上田教授による再生医療も、細胞を培養させて注入し、組織の再生能力を高めるというもの。iPS細胞と違い遺伝子の組み換えをせず、抜けた乳歯や親知らずといった倫理的な問題も少ない歯幹細胞を使用する。培養の技術や設備などがあれば、実際の治療は可能だ。しかしそのため、培養した細胞はiPS細胞ほどの順応性には迫ってはいないし、歯が残っている人にしか治療ができない、というのが現段階での弱点といえるだろう。

 だが、そんな上田教授による「再生医療」の技術はすでに、実用化の段階に入って来ている。日本国内ではまだ“一般的”ではない施術の理由と価格ではあるが──。

■周囲も分かるほど若返ったカルーセルさん

 「すごいですよ、女優さんたちに『どうだった?』って聞かれて。で、顔を見られては『うわぁ、若くなったね!』って言われて。

 でもね、『どこをどうしたの?』っていうくらい分からないわけ。整形で鼻を高くしたりとか、ボトックス(ボツリヌス菌を主体にした薬剤。注射すると筋肉の動きを弱めるため、額などのシワがのびる)を打ったりしたら、すぐ分かるでしょ? でも、自分自身で一番わかるのが口角と、ホホからあごにかけてのフェイスラインね。全体的に、キュッて上がったんです。

 唇の上の部分の立てジワが薄くなったし、唇なんかもうプルプル! 若い男性に『キスしたい!』ってほめられちゃいましたよ」

 こううれしそうに語るのは、カルーセル麻紀さん(65)。テレビ番組の企画の一環で、上田教授によるアンチエイジング治療を受けたのだ。

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 今回、カルーセルさんが受けた治療は、歯茎の中にある繁殖力の高い繊維芽細胞を採集して培養し、約2週間おき、2〜3回にわけて細胞を衰えた部分に注入。コラーゲン組織などを再生させて、若いころの肌を取り戻していく、という美容療法だ。なお、繊維芽細胞も、年齢が上がるにつれて繁殖力は落ちるが、歯幹細胞と同様の再生能力を持つという。

 治療を受けた本人は2週間後くらいから、そして1カ月後くらいからは周囲にも分かるほどに“若返る”という。その持続効果は3年以上といわれている。

 04年に晴れて「女性」という戸籍を取得する以前から、「女は灰になるまで女」という信念のもと、美容や食事に人一倍気を使ってきたというカルーセルさん。しかし還暦を過ぎたところから肌の衰えを感じるようになり、いわゆる「プチ整形」もいろいろ試してきたという。

 「肌が若返るというコラーゲン注射やヒアルロン酸注射もしたけど、みんな3カ月や半年ももたない。おまけに、シワ取りのためにボトックス注射をしてもらったことがあるんですが、私には合わなかったのかその先生がヘタだったのか、眉間(みけん)から鼻筋にかけて動かなくなって、ライオンみたいになっちゃったの! もう散々だったわよ!」

 元気をなくしていくばかりのお肌に、何かいい方法はないかと日々悩んでいたカルーセルさん。そんな彼女にも昨年末のiPS細胞作製成功のニュースは耳に届いていた。それに伴い、同じく再生医療でアンチエイジングができるとの情報も聞く。そこに、タイミングを見計らったかのように、番組制作サイドより連絡が。

 「カルーセルに、最新の若返り技術を受けてみませんか、とオファーがあったんです。それが今回の手術だったんですが、まだ日本では一般的な美容医療ではないでしょう。アンチエイジングに敏感な芸能界でもやっている方を聞いたことがなかったし、万が一、ウチの大切なカルーセルの顔に何かあったら大変ですからね。本人に伝えるまでに2週間くらい悩みましたよ。

 伝えたら伝えたで、本人は『知ってた! 受けてみたかったの!』と。そう言うとは思っていましたが(笑)、最近まで何か異変が起きなければいいと心配していました」(カルーセルさんのマネージャー・宇治田信夫氏)

■世界的には一般的な再生医療

 それに対し、上田教授はこう語る。

 「そもそも再生医療は、やけどのケロイドを消すための技術として発表され、80年代半ばくらいから研究をされてきています。その後、事故などのキズの修復、シワ取りなどの美容面にも応用され、90年代からは一般的な医療技術としてイギリスなどではすでに数万人以上の人たちに施されてきています。日本ではまだまだなだけで、世界的には一般的に認識された技術なのです。

 しかし、日本ではいまだ、美容クリニックで個人個人の医師の責任においてのレベルの医療技術でしかない。iPS細胞のような、まだまだ一般的になるまでに時間のかかりそうな技術より、もっと安全で歴史のある技術があることを、もっと広く知ってほしいのです」

 また、日本で現在一般的なシワ取りの美容医療については、こう指摘する。

 「アメリカでは現在、ボトックス注射を使った患者が死亡したり、呼吸不全になったりするケースがいくつも発覚したとして、米食品医薬品局(FDA)が副作用と薬との因果関係について調査を始めているそうです。美容整形大国である韓国でも同様の例が発覚したそうで、大騒ぎになっています。そんな危険な薬剤をいくら手軽だからといって使い続けていいのか。また、コラーゲン注射も、あれはヒト由来ものもではないですから、アレルギー反応が起きる可能性もあります。再生医療でしたら、そういった危険性はまったくありません」

 なお、この上田教授の再生美容技術が受けられるクリニックも増えてきている。だが、気になる手術料金は120万円程度が相場。現在シワの美容治療として一般的なコラーゲン注射の相場が5万円程度なので、かなり選ばれた人たちの治療法といえるだろう。これに対しては、

 「これは研究者である私がどうこう言えることではないのですが、一般的なクリニックの場合は、保険もききませんし技術者も少ない。立地条件などの関係もありますから、基準となる治療費は決められるものではないでしょう」(上田教授)

■再生医療は心のキズをも“再生”する

 実は上田教授は、今回のスポットライトの位置に、多少歯がゆく思っているのだという。

 「私の願いは『世界中の人の身体からキズをなくすこと』なんです。今回の件で、アンチエイジングの方面ばかり取り上げられてしまいましたが、もともと私は、再生医療を傷の復元のためにこそ医療現場に取り入れてほしいのです。

 日本は外科の手術については世界的に最高レベルですが、手術跡のケアについては悲しいくらい遅れています。身体のキズというのは確実に患者さんたちの心にも影響します。

 身体と心、トータルで救えてこそ、医療技術だと思うのです。その辺を、厚生労働省もっと、理解をいただきたいと思っています」

 とはいえ、今回ひとり、カルーセルさんの心のキズを癒やした上田教授。教授の願いどおり、「再生医療」は身体のキズだけでなく、心のキズをも“再生”する医療として、幅広く理解・認知されてほしいもの──。

動画インタビュー:金澤朋子

(記者:島田 みつる)

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