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2008年04月28日(月) 11時15分

迷惑行為が悪い? がまんが足りない人が悪い?オーマイニュース

 ニューヨークの電車内のいざこざが法廷で争われた、と4月9日付のNYタイムズ電子版が伝えている。日本でも起こりうるような内容で、参考になるかもしれないので紹介したい。

 マンハッタンと郊外をつなぐロングアイランド鉄道の車両内で起こった「事件」の張本人は、ロングビーチからマンハッタンに電車通勤するジョン・クリフォードさん(60歳)。引退した警官で、現在は私立探偵をしているという。

 彼の毎朝の願いは、車内でゆっくりと新聞を読み、朝食を食べること。ケガをしている背中を休めるため、5人分の対面座席に席を確保すること。

 ところが、車内にはiPodを聴きながらメークをし、さらに友達と話す女性がいたり、携帯でプライベートの話題を延々問題をしゃべり続ける乗客など、ジョンさんの心の平安をかき乱すグループがいたという。

 2007年3月、静かにしてくれるよう頼んでも聞き入れなかったので、ジョンさんは遂に堪忍袋の緒が切れた。そして彼は、携帯で話していた乗客に怒鳴り、もう1人の手を叩き、逮捕された。

 手を叩くぐらいで逮捕とはひどいと思うかもしれないが、アメリカという国では、ちょっと腕に手をかけただけでも暴行罪が適用される。これは日本との大きな差である。

 4月8日に彼は法廷に被告として立つことになった。ジョンさんに怒鳴られたり手を叩かれたりした被害者らは、ジョンさんが5シート席を独占し威張り散らしていたこと、大声で話す女性に向かって「お前の人生を地獄のようにできるぞ」などと恫喝したと証言した。

 対するジョンさんは、通路を隔てた席から大声でしゃべられるのは腹に据えかねる、仕事のことを考えたいのに集中できない、などと申し開きをした。

 判事は席を移れば良かったのではないかと質問したところ、ジョンさんは席がなかったと反論した。判事はさらに「行動は不適切ではなかったか」と問いかけたが、ジョンさんは、相手の行儀が悪いから不適切にならざるを得ない、と譲らない。

 ジョンさんは、実は今までにも逮捕されたことがあるが起訴は取り下げられてきた。今回も判事は「被告の行為を大目に見るわけではないが、犯罪とは認められない」として、ジョンさんを釈放した。鉄道側はこの判決に対し失望したという。

 ジョンさんは、車内の騒音は70デシベルまでと制限しているのに、ノイズメーターまで購入して計測したところによると電車自体がすでに70デシベルの騒音を発しており、車内でしゃべると80デシベルまで上がると主張し、エチケットルールを徹底させない交通局にも責任があると主張。他の乗客も迷惑だと感じているのに怖くて声をあげないだけで、自分はひそかに感謝されている、とも供述している。

 ただ、法廷をあとにしたジョンさんは、判事と、中立の立場の証人を探し出した検察までを褒め称えた上で、「まあ、自分がおろかなんだ」とコメントした。彼はその日、結局鉄道を使わず、「その方が便利だから」という理由で地下鉄を乗り継いで帰っていったという。

 私はロングアイランド鉄道には2度しか乗った事がないので詳しくはわからないが、マンハッタンの地下鉄と東京の地下鉄を比べれば、マナーの点ではまだマンハッタンの方が上回ると思う。

 アメリカ人は基本的に体が接触すれば「エクスキューズ・ミー」と言うのがマナーである。押すなど論外で、なるべく触れないように注意しているし、注意をする、される、という事が日本より多く、注意しても逆恨みをされるという事がないように思う。

 東京の電車内でもジョンさんのように堪忍袋の緒が切れる人はいる。ぺちゃくちゃと(それなりの)大きな声でおしゃべりする中年女性2人の前に立っていた中年男性が「うるさい!!」と怒鳴るのを目撃したし、携帯電話の使用をめぐってのケンカや、メイクしている女性の姿や車内でものを食べる姿が不快といった話題もメディアに登場する。

 メイクは確かに迷惑だし、高校生などが通路を隔てて着席し、大声で話しているのもあまりマナーが良いとは言えない。優先席では携帯の電源を切るようにという表示があるのに、守らない人が多い。

 ニューヨークの地下鉄では、「Stand clear of the doors(ドア付近は空けてください)」という車内放送が繰り返し流れるおかげもあってか、ドア付近に固まっている人はほとんど見ない。だが東京では、なぜか入り口にへばりついて離れない人が多く、乗降を著しく妨げている。

 日本にもそのうち、ジョンさんのような人が出て来てもおかしくないと思う。手を出してしまったジョンさんの非は明らかだが、そこに至るプロセスを考えれば、迷惑行為が先であり、そうした行為も改められるべきではないだろうか。日本の乗客も交通機関側も、もって他山の石として欲しい。そんな感想を抱いたNYタイムズの記事だった。

(記者:工藤 明子)

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