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2008年04月28日(月) 12時33分

<夫殺害切断>鑑定の信用性認める一方、完全責任能力を認定毎日新聞

 夫殺害・切断事件で28日の東京地裁判決は「事件当時は急性の精神障害を発症していた」という2人の精神科医の鑑定結果の信用性を認める一方で、動機や殺害状況、当時の生活状況なども総合的に考慮して完全な責任能力を認めた。

 判決は「殺害時は幻聴や幻視が生じ、相当強い情動もあった」と鑑定結果を追認しつつ、「夫との生活に絶望的になった」という動機が明確なことや、歌織被告が殺害時の状況や心情を記憶し、隠ぺい工作などもしていたことから、精神障害は責任能力に影響は与えていないと結論付けた。鑑定医2人は「刑事責任を問えない心神喪失だった」という意見も述べていたが、判決は「専門家としての分析結果であり、最終的に責任能力は裁判所が決める」と強調した。

 最高裁は25日に「精神医学者の鑑定は、公正さに疑いがあったり、前提条件に問題があるなどの事情がない限り、十分尊重すべき」という基準を示している。判決はこれに沿って鑑定結果を採用する形をとりながら、結果的には「心神喪失だった」という鑑定医の見解を退けており、分かりにくさは否めない。

 公判では来年5月に始まる裁判員制度を見据え、鑑定医2人が同時に出廷して口頭で鑑定結果を報告し、質問に答える試みが実施された。東京地検も事件を契機に、専門知識を備えた精神鑑定の担当検事を置いた。裁判員が責任能力を適切に判断するために、関係者にはこれまで以上に分かりやすい鑑定と立証活動が求められている。【伊藤一郎】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080428-00000043-mai-soci