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2008年04月28日(月) 12時19分

<夫殺害切断>歌織被告、表情硬いまま 説諭にうなずき毎日新聞

 「被告を懲役15年とする」。夫の三橋(みはし)祐輔さん(当時30歳)を自宅で殺害し、遺体を切断したとされる歌織被告(33)に対する28日の東京地裁判決。河本雅也裁判長は、最大の争点となった責任能力を完全に認めた。歌織被告は硬い表情を変えずに判決を聞き、傍聴席では遺族がすすり泣いた。

 午前10時ごろ、白いシャツ姿の歌織被告はこわばった表情で入廷し、傍聴席には一度も視線を向けなかった。河本裁判長は、夫からの家庭内暴力(DV)が続いていたことを挙げて「同情の余地が相当ある」とも言及したが、判決言い渡し後に「そういうことは刑事責任に影響するものではない。分かりましたか」と説諭。歌織被告は「はい」と答えた。

 さらに「反省して自分を見つめ直して立ち直ってもらえることを期待しています」と述べると、うなずいた。表情は硬いままで、涙はなかった。

 03年に結婚。祐輔さんは高給の外資系企業に勤め、周囲には「幸せな夫婦」と映った。だが、結婚生活は凶行で幕を閉じた。初公判は昨年12月。被告はか細い声で起訴事実を認め、何度も涙をぬぐった。「経済的に有利な条件で離婚したい被告が、思い通りに運ばない怒りを爆発させた」と主張する検察側に対し、弁護側は度重なるDVによる心の病を訴えた。

 法廷ではたびたび感情をあらわにした。「生活基盤がDVの場で、そう簡単には逃げられない」。鑑定医が家を出られなかった心理状態を裁判長に説明すると、感極まったようにむせび泣いた。殺害時の記憶を何度も聞く検察官には、「覚えてません」と怒りを向けた。

 遺族は「自分に都合のいい話をしているとしか思えない」と最前列で傍聴を続けた。判決の間、祐輔さんの父親はこみ上げる怒りを抑えきれないように右手の拳をひざの上で何度も握りしめ、隣にいた妻がそっと左手を添えた。

 歌織被告から祐輔さんに対する心からの謝罪の言葉は最後までなかった。「DVの実情を知らない人には分からない。当時の私は自分で自分の身を守るしかなかった」。今月10日の最終意見陳述で歌織被告は、こう語っていた。

 判決後、歌織被告の主任弁護人は「本人は控訴は絶対にしたくないと前から言っていた。今後の対応はこれから協議して決めたい」と話した。【北村和巳、銭場裕司】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080428-00000040-mai-soci