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2008年04月28日(月) 10時16分

<夫殺害切断>三橋歌織被告に懲役15年の判決 東京地裁毎日新聞

 東京都渋谷区の会社員、三橋(みはし)祐輔さん(当時30歳)を殺害し切断した遺体を捨てたとして、殺人や死体損壊などの罪に問われた妻歌織被告(33)に対し、東京地裁は28日、「あまりに残酷で無残な犯行」として懲役15年(求刑・懲役20年)を言い渡した。公判では鑑定医2人がともに「事件当時は心神喪失状態だった」と報告していたが、判決は歌織被告の完全責任能力を認めた。

 河本雅也裁判長は、事件当時の歌織被告の精神状態について「意識障害を伴うもうろう状態や幻視、幻聴状態に陥り、適切な行動の抑制が困難な状態にあった」と、鑑定の信用性を認めた。その一方で(1)頭部を集中して攻撃するなど一定の運動能力があった(2)自らの行動や被害者の反応なども記憶し、意識の清明さを保っていた−−などの理由から「精神の障害は責任能力に問題を生じさせる程度ではなかった」と結論付けた。

 そのうえで「生存を装うメールを送るなどの隠ぺい行為を繰り返し、遺族の気持ちを踏みにじった」と非難。しかし「夫から暴行を受け続けながら、夫は離婚の求めにも応じず、精神的にも追いつめられ、地獄のような夫婦生活を送っていた。同情の余地が相当ある」と述べた。

 判決によると、歌織被告は「夫から逃れたい。この生活を終わらせたい」などと考え、とっさに殺意を抱き、06年12月、自宅マンションで寝ていた祐輔さんの頭をワインボトルで殴って殺害。遺体をのこぎりで切断して、東京都新宿区の路上などに捨てた。【伊藤一郎】

 ▽渡辺恵一・東京地検次席検事の話 完全責任能力を認めた妥当な判決。量刑が求刑に比べてやや軽くなった点は、さらに詳しく検討して適切に対応したい。

 【ことば】刑事裁判での精神鑑定

 被告の精神状態について精神科医が専門知識を基に診断する手続き。「犯行時、精神の障害で物事の善悪が分からない状態(心神喪失)」と鑑定されると、裁判官が「責任能力がない」と認めて無罪になることがある。鑑定が「判断力が著しく減退している状態(心神耗弱)」なら、刑が減軽されるケースも。死因や交通事故の原因などを調べる別種類の鑑定と合わせ、全国の地裁で年間160〜180件程度の鑑定が実施されている。

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