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2008年04月27日(日) 03時09分

元社長・荒木容疑者、拒む幹部に不正強要…PCI事件読売新聞

 国が中国で進める遺棄化学兵器処理事業を巡る大手コンサルタント会社「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」(PCI)の特別背任事件で、元社長・荒木民生容疑者(71)が、当初は資金提供を拒んでいたPCI幹部らに対し、「反対すると大変なことになるぞ」などと言って要求に従わせていたことが同社関係者の話で分かった。

 東京地検特捜部では、当時PCIの持ち株会社社長だった荒木容疑者が、グループ全体に及ぶ人事権を背景に不正を強要、保身に走ったPCI幹部らが組織ぐるみで従ったとみている。

 同社関係者によると、荒木容疑者は2004年4月ごろ、PCIの副社長だった森田祥太容疑者(66)に対し、自分が社長を務めていた「パシフィックプログラムマネージメント」(PPM)に3億円を支払うよう要求した。PCIの持ち株会社が「遺棄化学兵器処理機構」を設立、機構が同事業を独占受注することになった直後のことで、森田容疑者はこの要求を承諾し、同事業の責任者だった多賀正義容疑者(62)に伝えた。

 多賀容疑者は当初、「PPMは機構設立に何の貢献もしていない」と要求を拒んだが、荒木容疑者は再三にわたり支払いを要求。森田容疑者は「PPMに金を払え。荒木さんは『多賀は物わかりの悪い男だ。反対すると大変なことになるのが分からないのか』と言っている」などと荒木容疑者の発言を伝えて、多賀容疑者を説得したという。

 多賀容疑者は最終的に森田容疑者の指示に従い、PPMへの資金提供の方法を考案。04年9月〜05年9月、PCIがPPMに架空業務を発注して計約1億2000万円を提供した。この金の一部は、荒木容疑者の長男の借金返済資金などに充てられていた疑いもある。

 多賀容疑者はこの資金提供について、「荒木(容疑者)は人事権を掌握し、1人株主と言われるほどだった。逆らったら会社から追い出されると思い、要求に従った」と周囲に語っていたという。

 荒木容疑者は、政府開発援助(ODA)を巡る水増し請求問題が発覚して役員刷新の声が上がった05年6月、「森田に協力的でない」との理由でPCIの役員3人を解任するなど、当時、PCIグループ内で絶大な権力を握っていた。

 森田容疑者は04年12月から05年12月まで、多賀容疑者も06年12月から昨年12月まで同社社長を務めた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080427-OYT1T00027.htm