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2008年04月27日(日) 16時17分

電気自動車ってどうなったの?オーマイニュース

 「近い将来、間違いなく電気自動車(EV)の時代が来る」などと言われはじめてから何年経ったでしょうか。1990年代には日本のほぼすべてのメーカーが熱心に開発に取り組み、大変な盛り上がりを見せていたものでした。

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 ところが今では、時折どこかの大学がとても実用化できそうもないEVを開発し、それをマスコミが報道するのを見かけるくらいです。

 有限責任中間法人電動車両普及センターに問い合わせてみると

「トヨタさんの『RAV4』、日産さんの『ハイパーミニ』など、各社ほんの数年前まではEVを生産しておられましたが、いまは、皆無だと思いますよ」

とのことでした。

 つまり、日本の大手自動車メーカーは、実際に公道を走れるEV実用車からは手を引いてしまっているのです。なにしろ、現在市場に出ているEVの実用車は、原動機付自転車を除くと、軽自動車のみのわずか5種類。手がけているのは中小企業ばかりです。

 さらに、電動車両普及センターのウェブサイトから電気自動車保有台数統計を見ると驚きます。EV保有台数が急速に減少(原動機付自転車を除く)しているのです。2001年(平成13年)から2006年(平成18年)で、1260台から505台へと半減以上です。購入しようにも、上市されているめぼしいEV がほとんどないのですから、当然なのかもしれません。

 しかし、最近、オートイーブィジャパンというEVメーカーを訪れる機会があり、思いのほか進化しているEVの現状と、世界的に見た日本のEV普及への取り組みの圧倒的な遅れを実感しました。

 例えば、同社がイタリア車をベースに開発に成功し、昨(2007)年発売した「ジラソーレ」(2人乗り)というEVを見てみましょう。最高時速は65キロ。いわゆる「ゼロヨン」は3.1秒と2000ccクラスのガソリン車と同等レベル。家庭のコンセントで5、6時間充電して、120キロの走行が可能。手軽な街乗りのための車としては十分な性能です。

 価格は260万円。かなり高額にも思えますが、「エネルギー自動車導入補助金」の対象車両になるので、最大77万円の補助金が交付されます。さらに自治体によっては上乗せの補助金を交付しているところもあり、そうなると、通常の軽自動車と変わらない価格で購入できます。また、燃費は1キロ1円ちょっとと激安なので、多少割高でもすぐに元はとれてしまいます。

■イタリアでは警察車両としても採用

 しかし、そんな状況のなかでも、ジラソーレをはじめ既存のEV実用車はかなり苦戦しているようです。もちろん大手メーカーのような派手な宣伝広告を打てないこともありますが、何より大きいのは有力なお得意先と考えていた地方自治体など行政機関からの需要がさっぱりなことです。どうも行政には、 1980〜90年代に大手メーカーの高額な電気自動車を大量に購入して、その使い勝手の悪さに苦労したトラウマが残っているようです。

 一般自動車として国土交通省に認知されるためには、安全性やエンジン性能、耐久性など、資金力のない中小企業にとって極めて高いハードルを超えなければならなりません。懸命の努力で、そのハードルを乗り越えたEVが、まったくの孤立無援では悲しすぎるのではないでしょうか。ちなみに、ジラソーレは母国イタリアでは警察車両としても採用されているようです。

 「行政は環境環境と、ただ、かけ声をあげるだけでなく、率先垂範してEVを導入すべきでは……」とオートイーブィジャパンの高岡祥郎社長は主張しています。

 中小メーカーの電気自動車への取り組みは、「儲からないことにはあまり関心がない」大手メーカーを補完するという社会的意義もあります。日本が、地球温暖化など環境問題に本気で取り組む気があるなら、このような事業を手厚く支援する必要があるのではないでしょうか。

(記者:高根 文隆)

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