記事登録
2008年04月26日(土) 14時56分

<聖火リレー>「加油」!「フリー チベット」! 鳴り響く双方の叫び声毎日新聞

 約3000人の警察官を動員した厳戒態勢の街を「平和と友好のシンボル」を手にしたランナーが走り抜けた。26日、長野市で行われた北京五輪の聖火リレー。沿道では、中国人留学生とチベットを支持する人たちが小競り合いを繰り返すなど騒然とした雰囲気に包まれた。国家の威信とナショナリズムがせめぎ合う中、市民は「これが平和の祭典なのか」と冷めた目で騒ぎを見つめた。

【写真特集】 欽ちゃん、愛ちゃんも狙われた…聖火リレーをレンズが追った

 午後0時半前。大勢の中国人留学生らが集まる「若里公園」(ゴール地点)に聖火が到着。雨の中、公園内は大小の真っ赤な中国国旗で埋め尽くされ、チベット人を支持する人たちが離れた場所で抗議の声をあげた。

 「加油(ジアヨウ、頑張れ)、加油」。午前8時26分、出発式会場の県勤労者福祉センター跡地前。予定より4分早く、紅白のTシャツに短パン姿の星野仙一監督が笑顔で姿を見せると、留学生たちの声が響き渡った。

 周辺では留学生たちとチベットを支援する日本人がもみ合う一幕も。千葉県東金市から来た中国人留学生、張強さん(27)は「五輪と政治は無関係。私たちは純粋に母国の五輪を応援するためにここにきた」。チベット支援の旗を掲げていた東京都町田市の会社員、弥吉(やよし)博幸さん(45)は「チベット弾圧は許せない。中国人はよく考えてもらいたい」と語った。

 聖火の出発に合わせてチベット自治区の暴動の犠牲者の法要が営まれていた善光寺前の交差点では、チベット支持をする人たちが「Free Tibet(チベットに自由を)」と連呼した。「統一を守ろう」。道路の反対側に陣取る大勢の中国人留学生らも声を合わせて繰り返し、双方の叫び声が響きわたった。

 午前8時55分。法要を終えた在日チベット人約30人が善光寺から沿道に姿を見せ、「チベットに平和を」とメガホンで訴え始めた。チベットの旗が高く掲げられると、気づいた中国人らが国旗を突き上げ「ワンチャイナ(中国は一つ)」と叫ぶ。チベット人が「我々に正義を」と連呼して前に進もうとすると、留学生が前に出て「うそつき」と大声で応酬した。

 一方で、沿道に集まった市民からは厳重な警備体制でのリレーに困惑の声が漏れた。ランナーは、両脇を併走する約90人の警察官にガードされて聖火をリレー。長野市三輪の主婦、松木久子さん(64)は「こんな異様な光景は初めて。何事もなく終わってほしい」と不安そうな表情。

 「とても『平和の祭典』という雰囲気ではない。お互いに主張が強すぎて、話し合える状況ではないのでは」。リレーを観ていた奈良市の専門学校生、大仲日和さん(20)は話した。

 「これじゃあ、よく見えない」。あちこちで市民から声が上がった。

【写真特集】 聖火、日本を走る
【写真特集】 混乱する北京五輪聖火リレー
【特集】 2008北京五輪
【写真と図で見る】 チベット暴動
【写真特集 北京への道】 井上康生が優勝、谷は決勝で苦杯

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080426-00000016-maiall-soci