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2008年04月25日(金) 01時22分

米産輸入牛肉 危険部位は見つかったが(4月25日付・読売社説)読売新聞

 輸入された米国産牛肉から、BSE(牛海綿状脳症)の病原体がたまりやすい危険部位の背骨が見つかった。

 日本向けに出荷する前に、こうした危険部位は完全に取り除く約束になっている。誤って混入した可能性が高いが、遺憾な事態だ。米側は、原因の究明と再発防止に真剣に取り組んでもらわなければ困る。

 問題の背骨は、牛丼最大手の吉野家向けに米ナショナルビーフ社が昨年8月に出荷し、日本国内の倉庫に保管されていた牛肉700箱の中から見つかった。

 すべて牛丼用のバラ肉のはずだったが、1箱に背骨付きの高級ステーキ用肉が入っていた。

 米国内では、同様の骨付き肉は普通に売られている。このため農林水産省は、ナショナルビーフ社が輸出の際、米国内向けの牛肉を誤って梱包(こんぽう)して出荷してしまったのではないかとみている。どうやら単純なミスのようだ。

 米国で初めてBSE感染が確認された2003年12月に、米国産牛肉は全面輸入禁止になった。

 05年12月に再開されたが、1か月後に背骨がみつかり、再び禁輸になった。この時は、輸出業者や米側の検査官が日本向けの輸出条件をほとんど認識していないという、重大な過失があった。

 その時と、今回では状況がかなり異なる。日本側が、ナショナルビーフ社からの輸入を当面、停止する一方、米国産牛肉全体を禁輸としなかったのは、妥当な判断といえよう。

 背骨混入問題を受け、日本側は輸入牛肉に対する検疫体制を強化する。これまでは、輸入牛肉の入った箱のうち、わずか1〜2%だった抜き取り検査の割合を、10%まで引き上げる。

 検疫を通過した牛肉については卸や加工の段階で、業者がすべての箱を開けてチェックすることになっている。

 今回も、加工前に背骨を見つけ出した。危険な牛肉が消費者の口に入る可能性はまずない、ということだ。消費者は、冷静に対応すべきであろう。

 日米間では、米国産牛肉の輸入条件緩和について協議が続いている。背骨混入問題と条件緩和は分けて考えるべきだ。

 日本の「月齢20か月以下」という輸入条件について、米国側は撤廃を求めている。撤廃の要求を受け入れるのは無理だが、国際標準は「月齢30か月未満」だ。日本が「30か月未満」を受け入れても、問題が生じることはあるまい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080424-OYT1T00647.htm