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2008年04月25日(金) 11時39分

ひきこもりを追い詰めてはいないかオーマイニュース

 茨城県土浦市の8人殺傷事件など、このところ、ひきこもりか、それに近い人の犯罪が増えてきた。

 ひきこもりの相談は、保健所・精神保健福祉センターが受け付けているのだが、中日新聞(WEB掲載)によると、「保健所・精神保健福祉センターの相談を利用したことがある人は35。 2%にとどまった。理由として『相談を実施していることを知らない』、『相談しても仕方がない』が、それぞれ3割近くあり、行政に対する不信感もうかがわせた」とある。

 そこで、私はひきこもり経験者の立場で、広島市精神保健福祉センターにメールで相談してみた。すると、ほとんどメールを読みもせず、「メールでのご相談はお受けしておりません」との返事が返ってきた。

 FAXでの相談は受け付けているのに、なぜかと不審に思い、再度、抗議のメールを送った。

 すると、「当センターのひきこもり相談について説明させていただきますと、相談があるのは、ほとんどご家族からで、仕事が出来ない、外に出すためにどのようにしたらいいのか、病気ではないか、というような相談内容です。電話で予約してもらい、面接相談を受けた後、家族だけでも、精神科医の診察を薦めております。

 継続して診察相談を受けていただいている中で、引きこもっておられるご本人が、無理なく受診され、当センターのデイケアに通所されている方もおられます。また、ひきこもりの家族の集いを通して、ご家族の大変さを、参加者が分かち合い、家族の気持ちが楽になるような話し合いや、まずは、本人の気持ちを大事に待ってみよう、というような話し合いを重ねていく中で、ご本人が就労に繋がった方もあります。(中略)

 また、こころの相談を受ける窓口としまして、お電話での相談をお願いし、その方のさまざまな背景や考え方など、いろいろな情報をいただきながら、解決の糸口になるところを一緒に考えさせていただいています。メールでの相談では、送信していただいた方からの限られた情報でしか判断が出来ず、適切にご相談できにくいことから、お断りさせていただいております」という答えが返ってきた。

 どうやら、ひきこもっている本人が直接相談してくることは想定していないようで、家族に対して「ひきこもりについてよく知りもしない」のに最初から精神病扱いで、他にたらい回ししているようだ(家族や本人が動けば受け入れますといった態度)。

 また、あたかも家族に問題があるような対応の仕方で、これでは家族が世間体などを気にしてあせり、外に出すことしか考えない現状がよく分かる。家族はひきこもりについてよく分からないから、単純に外に出したいと相談する。それをそのまま受け取っては解決にはならない。

 こうして、ひきこもる居場所がなくなった人が、外に出ざるを得ないことで、ストレスをため、犯罪を犯してしまう。精神保健福祉センターこそが、ひきこもりを追い詰める元凶だ。

 ひきこもりの経験者から言わせてもらうと、家族には何の問題もない。それどころか理想的な家族の場合が多い。

 ひきこもりは、自分の存在価値を見つけられず、「自分はこの世に居ても居なくてもいい存在」と、生活する意欲をなくしている(これは個性を殺す義務教育とオールマイティな人材を要求する社会に問題がある)。

 だから、家族はまず、ひきこもるというライフスタイルを認め、体調管理だけをちゃんとさせる(体調を崩し病気になると、通院しなければならず、外にでることになるからだ)。そうした安心できる環境を整えた上で、ひきこもり本人を頼りにすればいい。

 例えば、パソコンをあたえて、家計簿や自営業なら伝票のデータ入力をしてもらう。また、料理のレシピ、仕事で必要な情報をインターネットで集めてもらう。家族が不用品を集め、ネットオークションに出品させるのもいい。最初は拒否するかもしれないが、そういうことをすれば、ただひきこもって家族に迷惑をかけているのとは違い、家族の役に立っていることで、引け目を感じなくなる。それに仕事を覚えることにもなる。

 家族が役割分担をして、一心同体になれば、悩むどころか生活を向上することもできる。

 今はこうした解決方法を提案、支援できる相談場所がどこにもない。

 ところで、精神保健福祉センターは、なぜ、電話とFAXでしか相談を受け付けないのか?

 「メールでの相談では、送信していただいた方からの限られた情報でしか判断が出来ず、適切にご相談できにくいことから、お断りさせていただいております」とのことだが、電話、FAX、相談に来た人の顔色を見て、何が判断できるのだろうか?

 そもそも、ひきこもり本人と接触しないで、何が分かるのだろうか?

 メールなら、1度に多くのメールを受信でき、よくある相談を、Q&Aのようなメールで一括送信した上で、個別の対応をすることができる。ひきこもりの本人が、パソコンや携帯電話を使えるのであれば、直接話せる可能性もある。

 精神保健福祉センターの本音は、メールだと大量に相談がきてしまう可能性があり、時間外の対応も迫られる。また、パソコンを使うのが苦手な職員では対応できない。電話なら受け付け時間内の「自分たちが仕事がしたい時に応対できる」からだ。

 こんないい加減な対応しかできないのに、あたかも保健所と精神保健福祉センターには、相談する場所が沢山あるかのように装う。これは税金の無駄でしかない。

(記者:昿野 洋一)

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