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2008年04月25日(金) 06時02分

相次ぐ硫化水素自殺、巻き添え多数、発生容易で対応困難スポーツ報知

 高知県香南市の市営住宅「ハピネスかがみ」で、硫化水素とみられるガスで少女が死亡した事件で、同じ市営住宅の女性(27)が一時意識不明になっていたことが24日、分かった。この異臭騒ぎでは、近所の住民約120人が一時、近所のトレーニングセンターに避難。病院にかかった人も約90人に上った。身近な洗剤などを使って硫化水素を発生させる自殺はこの日も全国で相次ぎ、メーカーや消防は対応に苦慮している。

 香南市消防本部によると、一時意識不明に陥り病院に搬送された女性は、命に別条はないという。だが、亡くなった少女の母親とみられる女性(38)を含む住民14人が入院した。

 静かな住宅地がパニックに陥った。消防によると、周辺住民約120人が一時、近所の香我美トレーニングセンターなどに避難。この騒ぎで、のどの痛みや気分の悪さを訴え、救急搬送された人が21人、自ら病院に行った人も68人に上った。

 事件が起きたのは23日午後7時40分ごろ。同市の市営住宅(5階建て)で「異臭がする」との通報があり、県警機動隊が3階の一室で中学2年の少女(14)が死亡しているのを発見した。玄関ドアには「ガス発生中 開けるな」の張り紙があり、制服を着たまま浴室で倒れていたという。浴室に置かれた水槽のような箱から硫化水素が発生しており、部屋にはトイレ用洗剤の容器が落ちていた。検視の結果、少女の死因はガスによる中毒死と判明。県警は、硫化水素が階下に流出し、被害が拡大したとみている。

 少女は母親と2人暮らしで、学校ではバレーボール部に所属。1年の1学期に「練習についていけない」と母親から担任に相談があり、休部後、欠席が目立ち始めた。クラスメートは新学期になってから数回しか登校していなかったといい「理由を聞いても教えてくれなかった」と肩を落とした。

 硫化水素自殺とみられる異臭騒ぎは、全国で相次いでいる。ガスが発生するため、近隣住民や家族が巻き添えになるケースも多い。今月17日に東京都練馬区で男性が自殺した際には、同じマンションの14世帯39人が避難。昨年7月に神奈川県秦野市で男子大学生の自殺では、母と兄が巻き添えで死亡した。

 いずれも身近な洗剤や入浴剤を使って硫化水素を発生させており、洗剤メーカーは「故意に混ぜ合わせることを防ぐのは困難。情報を流すと模倣を招く」と困惑しているのが実情だ。

 ◆硫化水素 硫黄と水素からなる化合物の気体で、空気より重く、無色で卵が腐ったような刺激臭が特徴。吸い込むと呼吸障害を引き起こし、高濃度の場合には数回呼吸しただけで卒倒するなど致死性が高い。自然界では火山ガスや温泉などで発生する。硫化水素を発生させる方法がインターネットで広まっており、京都府警は今月17日にネットのプロバイダー(接続業者)に書き込みの削除を検討するよう文書で要請している。

http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20080425-OHT1T00084.htm