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2008年04月24日(木) 00時00分

体調への不安抱え避難所で一夜 高知・硫化水素自殺朝日新聞

 現場の部屋の階下に住む会社員男性(53)は午後8時ごろ、テレビを見ていて赤色灯に気付いた。「火も煙も見えないのに何で、と思っていたら、消防隊員が家に来て退避しろと言われ、着のみ着のままで逃げました」と戸惑いを隠さない。妻(58)がのどの痛みを訴えて入院。自分ものどの調子が悪く、病院で診察を受けた。「テレビの世界のことと思っていたが、今も何が起きたかピンとこない」

現場近くの体育館に避難した住民たち=24日午前8時35分、高知県香南市、矢木隆晴撮影 硫化水素による異臭騒ぎがあった市営住宅(後方)へ向かう消防隊員ら=24日午前8時40分、高知県香南市、矢木隆晴撮影 硫化水素が発生した部屋(左)に向かう捜査員ら=24日午後0時15分、高知県香南市、矢木隆晴撮影

 現場と同じ階に住む主婦(43)は、テレビを見ていたら硫黄のような強烈なにおいを感じた。「部屋を閉め切っていたのに、とにかくすごいにおいだった」。長女が亡くなった女子中学生と同級生で、「ごく普通の子だった。こんなことになるなんて」と動揺した様子だった。

 同じ棟の4階に住む会社員男性(47)は、窓を開けた際に異臭を感じた。警察の指示で妻(31)と子ども4人を連れてマイカーで避難したが、妻が「気分が悪い」と訴えて嘔吐。病院で点滴などの処置を受けた。「まさか、自分たちのすぐ近くで起きるとは……」と驚いていた。

 2階に住む女性(46)は部屋の中で異臭を感じた。「プロパンガスかね」と家族で話していると、避難を呼びかける拡声機の声が聞こえ、慌てて逃げた。

 通報を受けて最初に現場に到着した消防隊員によると、市営住宅の入り口で硫化水素特有の「卵の腐ったような」においがしたという。すぐに消防本部に連絡、避難勧告を出すよう求めた。

 避難先の体育館では、消防署員らが治療の優先順位を決める「トリアージ」を約150人に対して実施した。このうち、「のどが痛い」「気分が悪い」など具体的な体の不調を訴えたのは、15人程度だったという。

 南側の棟に住む妊娠4カ月の女性(22)は避難の知らせに気づかなかった。家族3人で一夜を明かしてしまい、朝になって周囲の異常に気づいて避難所に駆け込んだ。「昨夜は午前0時から1時ごろにかけて、変なにおいがしていた。おなかの子に影響があるのではと思ったけど、『毒素は体に蓄積しない』と説明を受けた」と安心した表情。

 のどの痛みを感じて家族4人で近くの病院に行った男性(30)は、そのまま病院で一夜を明かした。「とにかく疲れた。全然眠れなかった」とぐったりしていた。

http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK200804240024.html