記事登録
2008年04月24日(木) 15時05分

私はコレで『純愛』をやめました〜元会計顧問インタビュー(後編)オーマイニュース

前編からのつづき

 これまでオーマイニュースで繰り返しリポートしてきた偽装映画『純愛』(主演・総指揮=小林桂子氏)。その元会計顧問である公認会計士・細山勝男氏が、前編に引き続き、『純愛』会計顧問を辞任した理由と現在の思いを語る(動画は こちら )。

ほかの写真も見る

■「勝手にそんなこと決めないでくれよ」

──『純愛』は興行収益で中国に学校を作ると出資者に言っていましたが、収益が出てないのにチケット代の10%を寄付すると表明しました。法的には問題ないのでしょうか。

 法的には必ずしもクリアではありませんが、(出資契約では)中国への寄付を、必ず最終的な余剰金からしか出してはいけないという明確な縛りはありません。自分を含めて多くの投資家は、恵まれない中国の子どもたちのためにお金を出しているので、寄付が(収益が出るより)先に行われることについては、必ずしも否定的ではないと思います。

──例えば『純愛』は、東京興行のチケット収入1200万円のうち120万円を寄付すると発表しました。チケット収入のうち少なくとも半分は劇場の取り分です。「10%」は実際には『純愛』の取り分の20%にあたる額です。よく出資者が怒らないと思いますが。

 「10%を寄付」というのは、いま初めて聞きました。僕自身も投資家ですけど、「勝手にそんなこと決めないでくれよ」と思いますね。匿名組合では、法律的には営業者(ケイズカンパニー=代表・小林桂子氏)は自由にやっていいんです。それが会社の重要事項について発言権を持つ株式会社の株主と、匿名組合の出資者の違う点です。

 しかし、(出資者たちは)もともと友達だったわけだし、重要な決定は事後報告くらいしてほしかった。違法ではないとはいっても、こうした一つ一つの行為が積もり積もって、出資者が「いったい何をやってんだ!」と怒りを爆発させることも、ないとは言えないですよね。あの 2人と協力し合った人たちとの信頼がひとつひとつ壊れてしまうと思う。

■「小さなうんざりの積み重ね」

──その辺りが会計顧問辞任の理由でしょうか。

 ひとつのことではなく、小さなうんざりの積み重ねです。それで「ああ、もうや〜めた」という感じになりました。2人(小林桂子氏と奥山省吾氏)とはいまでも友達です。ただ、会計顧問として協力し続けることはできない、という決意に至ったと。

──例えば、象徴的なうんざりは?

 順不同で言うなら、会計関係の実務が苦手な市川(慶子)さんが経理の実務を担っていたので、何度も「誰か専門家を雇ってくれ」と言ったんですが、受け入れられなかったこと。会計データがあがってくるのに何カ月もかかって、出資企業の経理の人から僕に「どうなってるんですか」って督促の電話が繰り返し来るんですね。これが改善されなかったのが、うんざりポイント1ですね。

 うんざりポイント2や3は、銀座での公開やモナコでのことも含めて、僕はみなさんと足並みそろえていくのは無理だなあと感じた出来事がいろいろあったこと。僕は基本的にもうやめてほしいと思ってるんで、このプロジェクトをね。ビジネス的に無理だと思うし、みんな離れるばっかりだしね。いまならまだ傷は浅い。友人としては、とっととやめてほしい。

■「自分らが主役として脚光を浴びたい」

──細山さんが最後に関わったイベントはモナコだと思いますが、あそこでも純愛の方たちはずいぶん面白いことをしていたと聞きました。

 モナコでのことを事細かに話すことが必要なことかどうか、ちょっとわからないですけどもねえ。2人が本当にやりたいことは何なんだろう、って思いますね。僕の目には、自分らが主役として脚光を浴びたい、というふうにしか見えなくなっちゃってるんですよね。本人たちは違うと言うかもしれないけれど、実際にそういうふうに見えちゃうんです。

──例えば、どういった辺りがそう見えるんでしょうか。

 トークショーなんて、やらなくていいじゃないですか。映画だけやればいい。(札幌で)4回の上映を3回に減らして自分らが舞台に上がる必要はない。なんでそこまで舞台に上がるんですか? っていう感じなわけですよ。

──札幌の行き来の交通費・宿泊代だけで、単純計算すると100万円以上かかってる(藤倉試算)。

 そんなに(札幌へ)行き来してるんですか?

──計49回の上映回で(小林桂子氏らが)挨拶してました。

 ホントに? 領収書貼る人(会計担当)を雇うお金をもったいながるくらいなら、そんなことしなきゃいいじゃないですか。何がやりたいんですか? って話じゃないですか。

■小林桂子氏は自分を大きく見せたい?

──僕の目から見ると、『純愛』は悪意による詐欺集団というより、つたなさとかオーバーな宣伝、実際にできないことを「できる」と宣伝しているところが問題かなと思うんですが。

 悪意はないというか、人を騙すつもりはない。でも、2人は自分をより大きく見せたいという気持ちがあると思います。

──小林桂子さんや出資者は自己啓発セミナーで「ありのままの自分」をさらけ出した仲間ですよね。大きく見せるというのは、セミナーの理念に反するのでは?

 ETLセミナーの第二段階コース(アドバンスコース)までは「ありのままの自分で行きましょうよ」というのがメインテーマ。これは役に立つんですよ。そこで終わればいいのに、第三段階コース(LCコース)に入ると、目標設定して、しかもそれが数字目標なわけですよね。なので第三段階では等身大の自分ではなく、虚言と言えるほどに大きくしようという無理なことをやるプログラムになっています。しかもそれは心の面での目標ではなく、外的なたんなる数値目標。第二段階までの貴重な価値を自己否定するプログラムになってます。

──エンロール(自己目標という名のノルマを課した勧誘活動)ですね。

 アドバンスまでとはまるっきりテーマが違っちゃう。逆になっちゃう。ここに無理がある。

■「(映画の)会計顧問なんて二度とやらない」

──小林桂子さんの姿勢は、LC(セミナーの第三段階)の理念には沿っていると。

 LCの価値観とピッタリって感じですよね。「もうやめようよ、それ」、って思います。

──スター志向というか、自分を高い位置に行きたいという感じ?

 (本人は)意識してないかもしれないですけどね。今回の件でも、例えばNPO法人なんて作らなくてよかった。(学校建設の寄付をするのは)ケイズカンパニーでもよかったんですよ。小林桂子基金なんて個人名を冠したNPO法人はあり得ないっていうのも記事で読みましたけど、(小林桂子氏が)前面に出たいっていうのがいろんな場面で強いんですよね。そんなの、かえって効果を低めちゃうんじゃないかな、と思います。

──もし小林桂子さんたちが『純愛』をやめて、別のことをやろうとしたらどうしますか?

 いや、もう映画は勘弁して。会計顧問なんて二度とやらない。映画はやめてほしい。もっと別のことをやってほしい。(映画は)もう飽きました(笑)。

──ありがとうございました。

  ◇

 インタビューの中で細山氏は、「奥山さんと小林桂子さんはいまも友人」と語った。小林氏・奥山氏への非難というより、友人として2人を心配しているといった印象だ。そんな細山氏の思いが、多少なりとも小林氏・奥山氏に伝わればいいのだが。

(記者:藤倉 善郎)

【関連記事】
偽装映画『純愛』会計の裏事情(前編)
[動画]『純愛』はとっととやめて
釈明も空しい偽装映画『純愛』のいい加減さ
チャリティー映画『純愛』のウソを暴く! (前編)
藤倉 善郎さんの他の記事を読む
【関連キーワード】
純愛

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080424-00000012-omn-soci