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2008年04月24日(木) 03時37分

チベット騒乱の犠牲者を悼む49日法要オーマイニュース

「オンマニペメホン、オンマニペメホン……」

 4月23日、東京都内・梅窓院で「チベットの平和を願う集会」が開かれた。1部がチベットで亡くなった人々を悼む「49日法要」で、2部が「ペマ・ギャルポと中沢新一の対談」。

 法要予定時間の16時には200人超の参加者たちが集まり、3月10日以来チベットで犠牲になった人々への追悼法要が約2時間にわたって行われた。

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 静かな読経が会場に流れると、なかには思わず涙を流す人々もいた。参加者の中年女性は「彼ら(犠牲者)のために仏様にちゃんと祈りたくて参加した。100人以上の御霊がちゃんと天に召されることを祈ります」と話す。

 18時に法要が終わると、1時間の休憩時間を挟んで中沢新一氏(多摩美術大学教授・チベット仏教学者)とペマ・ギャルポ氏(チベット文化研究所所長・桐蔭横浜大学大学院教授)による対談が始まった。

 ともにチベット専門家であり、特にペマ氏はダライ・ラマ法王日本代表部事務所の初代代表も務めた。中沢氏は、青年期にチベット、ネパールなどで仏教修行をしていた異色経験の持ち主。

 両氏は、チベットが中国政府に弾圧されている理由、ダライ・ラマ法王の非暴力主義が意味するもの、チベット仏教から起因する奥深い精神世界についての会話を交した。

 オリンピックに話題が及ぶと、中沢氏の口調が険しくなる。

 「中国テレビの女子アナウンサーが(チベットの事態から)オリンピック精神への復帰を言っているが、本当に復帰させましょうと言いたい。そもそも北京オリンピックを世界が認めた理由は、中国政府が人権問題の解決に取り組むことを期待し、また彼らもやると言っていたからだ。でも今こうなっている。『北京オリンピック精神』ではなく、本当の『オリンピック精神』に戻りましょう」

 ペマ氏も「チベット人が要求しているのは『高度な自治権』なのに、これを中国の人々はすぐ『分離独立』と勘違いしている」と呆れた表情を見せる場面もあった。

 対談の具体的な様子はこちらの 「ライブ配信映像(ノーカット)」 (←こちらをクリック)を観ていただきたい。

 対談が終わってペマ氏を直撃した。ライブ配信中に視聴者から寄せられた質問で、来る26日に長野で行われる聖火リレーに関するものだった。

 「26日の聖火リレーに『非暴力だけど効力のない抗議活動と、違法的ではあるが、自分たちのメッセージを効果的に宣伝できる抗議活動』がある。どちらを選ぶかチベット人の考えを聞きたい」(HN:ダルクさん)

 この質問についてペマ氏はこう答えた。

 「ダライ・ラマ法王は、非暴力を常に訴えてきたので、チベット人たちは合法的な行動をとると思います。しかし、大事なのは非暴力が無抵抗ではない、ということです。ダライ・ラマ法王、ガンジー、ネルソン・マンデラ……皆、非暴力ですが、無抵抗ではありません。中国政府の態度に反対するアピール活動は当然やると思います」(ペマ・ギャルポ氏)

 中沢氏には「今回初めてチベット問題を知った若者も多い。彼らの中ではチベットのために何かをしたいという気持ちがあるようですが、何をどうすればいいのか」と聞いてみた。

 「まずチベットのことを勉強しないとダメです。ただ反対するだけじゃ無理。いろんな事情や歴史を勉強すべき。そして旅行ですね。チベット、ネパール、北インドに行くとチベット文化に出会えますから。ある程度知ったうえで自分の意見・意思を伝え、また行動してほしい」(中沢新一氏)

 取材の終わり際、仏教徒のある参加者が「チベットでなくなった人の中には10人余りの中国人も含まれている。法要でも彼らが触れられていましたが、亡くなった皆さんが安らかに眠ってほしい」と語ってくれた。

 マスコミの報道でよく「敵対関係」に設定される、中国とチベットだが、実際にはこういう見方もあった。まだまだ修行が足りない自分に気付いたのである。

 亡くなった人々が安らかに眠れますように……。

(記者:朴 哲鉉)

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