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2008年04月24日(木) 08時00分

ODA受注でリベート PCI元会長ら逮捕 海外政府関係者に提供産経新聞

 大手建設コンサルタント会社「パシフィックコンサルタンツインターナショナル」(PCI、東京都多摩市)グループの遺棄化学兵器処理事業をめぐる不正支出事件に絡み、PCIが少なくとも十数年前から、政府開発援助(ODA)事業を受注するために裏金を作り、東南アジア諸国の政府関係者にリベートとして提供していたことが23日、複数の関係者の証言で明らかになった。裏金は多いときで年間5億円に上り、架空経費の計上などで捻出(ねんしゅつ)して、PCI元幹部らがエージェントとして現金を手渡していたという。

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 東京地検特捜部は同日、グループ間の架空取引でPCIに約1億2000万円の損害を与えたとして、特別背任容疑で同社元会長の荒木民生(71)、元副社長の森田祥太(66)ら4容疑者を逮捕。特捜部はこうした裏金を含め、PCIをめぐる不透明な資金の流れについて荒木容疑者らを追及するとみられる。

 特別背任事件の舞台となった遺棄化学兵器処理事業と同様、政府の海外事業に絡む不正工作が新たに判明した。

 複数のPCI関係者によると、同社では平成13年ごろまで、受注したODA事業を下請け発注したよう装い、架空経費を計上するなどして裏金を捻出。いったん日本の本社に集めてから東南アジア諸国の海外事務所へ送金し、現地社員がODA受注の成功報酬として、現地政府関係者に渡していたという。

 13年ごろからは、日本からの送金は不正が発覚しやすいとして、裏金の集計作業をフィリピンの現地法人に移転。裏金は本社ではなく香港の現地事務所で直接プールするよう、贈賄工作を巧妙化させた。

 さらに15年2月ごろ、外国公務員への不正な利益供与を禁じた不正競争防止法の改正で、日本企業の海外現地法人の贈賄行為も処罰対象となる見通しとなったことから、PCIは贈賄工作の方法を再検討。その結果、同社元常務に香港で個人会社を設立させ、PCIとエージェント契約を締結。現地社員が手渡していたリベートは、元常務自身や現地のエージェントが政府関係者に渡すようになったという。

 PCI関係者は産経新聞の取材に対し「アジアではわいろを贈らないと仕事がとれない。エージェントを介すようになったのは贈賄の実態を隠すためだった」と証言している。

 リベートはフィリピンで受注額の約6〜10%、タイ、インドネシア、ベトナムなど同国以外で約5%が相場だったという。PCIは14〜19年度、東南アジア9カ国のODA事業で計135件、約289億円を受注している。

 贈賄工作については17年11月ごろ、PCIの持ち株会社であるパシフィックコンサルタンツグループ(PCIG)の常務会で議題に上った。常務会には荒木容疑者も参加しており、贈賄工作を容認する発言をしていたという。こうした関係者の証言に対し、PCIは「そのような事実はない」としている。

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 特捜部の調べによると、荒木容疑者らは共謀の上、16年から17年にかけ、グループ会社「遺棄化学兵器処理機構」(東京都港区)から約3億円でPCIに委託された遺棄化学兵器処理事業を外注する際、同「パシフィックプログラムマネージメント」(PPM、東京都千代田区)を介在させる形の架空取引を考案。計1億2000万円をPPMに不正支出した疑いが持たれている。


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