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2008年04月23日(水) 10時33分

光市事件死刑判決、私はこう考えたオーマイニュース

 山口県光市で1999年に起きた母子殺害事件差し戻し控訴審は4月22日、広島高裁で判決公判があり、被告の元少年に死刑が言い渡された。犯行時18歳1カ月の未成年を極刑に処すべきか、弁護団の言動やマスコミの論調が世論に与えた影響は、そして、来年始まる裁判員制度に本判決が与える影響は——。市民はこの判決をどう受け止めたのか。

 オーマイニュース編集部では以下4つの質問を読者に投げかけ、意見を募った。寄せられた回答では、「判決は現行法に照らしておおむね妥当」が大多数。だが、事件あるいは判決に対しては、確固とした意見より、複雑な思いを寄せる声が多くあった。一部を紹介する(読者名は名字のみ、あるいは匿名で記載します)。

(1)出された判決は、「現行法に照らして」妥当であったと思いますか?

◇「妥当」と考えた人の意見

・報道されているのが事実のほとんどなら、判決は妥当だった(itoさん)

・慣例という惰性で判決を書くなという最高裁の差し戻しも適正だった(永井さん)

・情の見えない裁判を大衆は許さない(takaoさん)

・法の下に仇(かたき)を討つに値する判断をすることで、国民は国に忠誠を誓うことができる(匿名=日本を愛する国民さん)

・単にこの設問ならば「妥当」だと思うが、死刑は間違いだと思う(星野さん)

・18歳に死刑判決が出たことは画期的であるが、犯罪の特異性に鑑み、妥当であったと思う。(澤田さん)

◇「妥当」ではないと考えた人の意見

・現行法では妥当ではない。しかし、若年層の犯罪が目立つ現状に警告を発する意味ではよかったのかもしれない(堀さん)

(2)今回の事件に関する報道のあり方について、感じたことは?

・検察側の主張についてももっと取り上げるべきであった(匿名)

・テレビのワイドショーの表面的で感情的な煽動姿勢には危機感を覚えるが、「被害者の権利がおろそかにされている」という事実を広くし知らしめた功績はある。おそらく、新聞や一部の論説だけでは世の中がここまで認識しなかったと思う(永井さん)

・被害者に同情する世論が巻き起こったことで、死刑以外の選択肢を事実上なくしてしまったようにも見える(星野さん)

・報道は適正であったと思う(松山さん)

・死刑に反対する意見や団体の行動ばかりが目立つが、多くの国民は死刑制度に賛成している事実を、もっと強く報道すべき(匿名=日本を愛する国民さん)

・ニュースさえも事件をワイドショー的な捉え方しかしていない。裁判の基本的なことをもっと視聴者に提示して、考える機会を与えるべき。感情論では、裁判を公平に考えることができなくなる(澤田さん)

・マスコミが被害者感情を必要以上に煽ってきた感はある。ただ、9年前に起きた事件を大きく扱ったことによって、私たちも関心を持つことができたという面もある(大谷さん)

・あまりに喧しく報道されたのでこのニュースがでるとすぐにテレビを切った。だからあまり見ていない(堀さん)

(3)今回の事件に関する一連の騒動で、何が1番深刻な問題だったと考えますか?

・弁護団が死刑廃止論者であることはどうでもいいのですが、「優しくしてもらいたいという甘えの気持ちで抱きついた」「ドラえもん云々」「屍姦によって生き返ると思った」などというのは、いくら被告のためとはいえ、客観的に見ても荒唐無稽な供述だった。司法を冒とくしているとしか思えなかった(匿名)

・問題は被害者側に報道が偏っていた点ではないのかと思ったが、被告側の情報は規制されたものしか出ないので、仕方のないことかもしれない(itoさん)

・問題の第1は報道、第2に司法制度。閉廷後記者会見をした本村氏に、「死刑に対するハードルが下がることについてどう思うか?」と質問した記者がいるが、被害者にする質問だろうか。司法制度については、無期懲役と死刑のギャップを埋める「終身刑」の不備が解決されていない。終身刑や「懲役100」年というような量刑があれば、国民の死刑に対する考え方も変わってくると思う(永井さん)

・被害者が頻繁にマスコミに出たことで、「被害者感情」を理由にした量刑の議論が起こってしまった(星野さん)

・被告弁護団が、この事件を死刑制度反対の運動とまぜこぜにしたことが問題だった(ペンネーム=日本を愛する国民さん)

・弁護団が被告人に事実と違う弁論をさせたことがとても深刻な問題。弁護士の資質が疑われるこの事態は、司法制度そのものの信用をなくすもの。(澤田さん)

・日本の少年法は、再犯防止につながりきっていない。見直しと反省が必要なのに実行しようとしない。これからの司法制度のあり方を考えると、深刻な感じがする(長瀬さん)

・弁護団が死刑反対のグループだったため、その主張を述べる場としてこの裁判を利用したのではないか(堀さん)

・9年間と言うあまりにも長い期間を要する現在の刑事司法制度は、被害者、加害者とも相当の精神的、経済的な負担がかかるのではないか(大谷さん)

(4)あなたがこの裁判の裁判員だったなら、どう判断しますか?

◇死刑と判断する

・実際、この少年に会うことが出来て、話を聞くことができたら、今回の判決と違う意見になる可能性もあるかなと思う。(itoさん)

。裁判を傍聴して、証拠や証言を聞いたわけではないので「死刑」か「無期懲役」かは正確な判断はできない。しかし、メディアの報道が正しい前提で、かつ本人が強姦と殺人を争っていないなら、18歳という年齢を考慮しても「死刑」判決に手を上げる(永井さん)

・今回の裁判では、被告からも弁護人からも被害者の悲しみをくみ取る感情の言葉は一切なかった。ただ「不当」「不当」というのみだった(takaoさん)

・あのような被告の弁解が成り立つならば、どんな犯罪でも、事後にあれこれ理由付け出来る。妄想や思いこみの殺人が許されるならば、ほとんどの殺人はそれに該当するだろう(日本を愛する国民さん)

・死刑もやむなし(澤田さん)

・被害者感情への配慮は抜きにしても、私は死刑を選ぶ(大谷さん)

・死刑判断は、年齢による紋切り型の判断ではなく、さまざまな状況から判断すべきだと思う(匿名)

◇死刑とは判断しない

・無期懲役(星野さん)

・無期懲役。自分が裁判員になった場合、どんなケースでも死刑にはできないと思います。今回のように、被害者遺族のつらさがありありとわかり、死刑の判決が妥当だとわかっていても、自分が裁判員であれば死刑にする勇気はありません(松山さん)

・死刑そのものには反対だが、この事件の場合、加害者の陳述がくるくる変るのを聞いて、彼の発言も心情も、ひいてはそれを誘導しているように見える弁護団の主張も、疑わしくなった。しかし死刑に1票を投じることはできないと思う(堀さん)

(OhmyNews 編集部)

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