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2008年04月22日(火) 12時03分

【光市母子殺害】被告に死刑宣告 新供述は「不自然、不整合、到底信用できない」産経新聞

 山口県光市の母子殺害事件で、殺人や強姦致死などの罪に問われ、最高裁が無期懲役の2審・広島高裁判決を破棄した元会社員の男性被告(27)=事件当時(18)=の差し戻し控訴審判決公判で、広島高裁の楢崎康英裁判長は無期懲役(求刑・死刑)とした1審・山口地裁判決を破棄、被告に死刑を言い渡した。

■イラストで見る■差し戻し控訴審判決公判に臨む被告の元少年

 事件発生から9年を経て4度目となる判決で、初めての死刑宣告。犯行時18歳だった被告に高裁レベルで死刑が言い渡されるのは、最高裁に記録が残る昭和41年以降3人目で、近年の厳罰化の流れを反映した司法判断となった。

 楢崎裁判長は主文の言い渡しを後回しにし、理由を朗読。まず被告の供述が差し戻し前の1、2審と現在とで変遷した理由について検討。「起訴から現在の弁護人が選任されるまでの6年半以上もの間、それまでの弁護人に一度も現在と同様の供述をしていないのは不自然」と指摘した。

 次いで現在の新供述の具体的な信用性について検討を進め、本村洋さんの妻、弥生さん=当時(23)=が死亡した状況をめぐり「右手の逆手で首を押さえつけた」とする新供述は、遺体の所見と整合しないと判断。弥生さんを死後に乱暴したことを「生き返ってほしいという思いからの『復活の儀式』だった」とした新供述も、到底信用できないとした。

 さらに長女の夕夏(ゆうか)ちゃん=同11カ月=の死亡状況をめぐる新供述についても信用性を否定。1審判決が認定した犯罪事実に誤りはないと結論づけた。

 差し戻し控訴審で弁護側は、新たに実施した法医学鑑定などを根拠に、被告には殺意も強姦目的もなかったと主張。これに対し検察側は「死刑を回避するための荒唐無稽な弁解」と反論し、死刑をもって臨むほかないとしていた。

 差し戻し前の1、2審はいずれも「刑事責任は極めて重大」としながらも、被告が事件当時、死刑を科すことのできる18歳になってから30日だったことを重視し、無期懲役を選択した。しかし最高裁は平成18年6月、「18歳になって間もないことは死刑を回避すべき決定的な事情とまではいえない」と判示。「無期懲役の量刑は甚だしく不当で、破棄しなければ著しく正義に反する」などとして審理を差し戻していた。

 上告審判決によると、被告は11年4月14日、光市の会社員、本村洋さん(32)方を排水検査を装って訪問。乱暴目的で妻の弥生さん=当時(23)=の首を両手で絞めて殺害し、長女の夕夏ちゃん=同11カ月=も首に巻いたひもを引っ張って殺害するなどした。

 広島高検の北村道夫次席検事の話 「先の最高裁判決からみても妥当な判決と考える」

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