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2008年04月22日(火) 19時18分

烏賀陽氏敗訴 オリコン側の主張をほぼ認めるオーマイニュース

 ヒットチャートで知られるオリコン(小池恒社長)が、雑誌『サイゾー』の取材に対してコメントしたフリージャーナリストの烏賀陽弘道氏を名誉棄損として訴え 、これに対してオリコンの訴え自体が「SLAPP(スラップ)=Strategic Lawsuit against Public Participation」であり、違法性があるとして烏賀陽氏が訴え返した「オリコン訴訟」(併合審理、綿引穣裁判長)が22日、東京地裁で開かれた。綿引裁判長は主文で「本訴被告は本訴原告に対し100万円を支払え」として、オリコン側の主張をほぼ認め、烏賀陽氏の敗訴の判決を申し渡した。烏賀陽氏側は判決を不服として、控訴する方針。

 判決によると、主文は以下の通り。

 1)本訴被告(反訴原告=烏賀陽氏)は本訴原告(反訴被告=オリコン)に対し、100万円を支払え。

 2)オリコンのその他の請求は棄却。

 3)烏賀陽氏の反訴請求を棄却。

 4)訴訟費用は、本訴反訴ともに、これを6分。その5をオリコンの負担、その余りを烏賀陽氏の負担とする。

オリコン側は、雑誌『サイゾー』(2006年4月号、当時インフォバーン)にコメントした烏賀陽氏に対して、名誉毀損だとして5000万円の損害賠償と、謝罪広告の同雑誌への掲載を求めていた。また、一方で、烏賀陽氏側は「本訴提起の目的は言論を不当に抑圧すること」と本訴提起の違法性を主張。また、オリコン側のホームページなどでも名誉毀損をしてきた、として、1100万円の損害賠償を求めていた。

 まず、烏賀陽氏が『AERA』(朝日新聞社)の記者だった2003年1月当時に同誌に掲載していた記事について、オリコン側は『サイゾー』における名誉毀損案件と一体と主張していた。しかし、綿引裁判長は「本件コメント(サイゾー)による名誉毀損と本件文章(AERA)による名誉毀損を一連かつ単一の不法行為と評価することはできない」とし、仮に判断するとした場合でも、『AERA』による名誉毀損の賠償請求はすでに時効とした。

■コメントがそのまま掲載されることを容認

 一方、「オリコンは予約枚数もカウントに入れている。予約だけ入れておいて後で解約するカラ予約が入っている可能性が高い」や「オリコンの数字はレコード会社によってある程度操作可能である」など、『サイゾー』に掲載された烏賀陽氏のコメントに対しては、「それだけでオリコンの社会的評価を低下させる」とした。ただ、「オリコンは不思議な団体である」などは「事実の適示」ではなく、他社(サウンドスキャン)との比較という「論評」であるとして、名誉毀損ではないとした。

 ただ、名誉毀損の対象となった烏賀陽氏のコメントは、同誌編集部が電話で取材したものをまとめたものだった。この点については、「自己のコメント内容がそのままの形で記事として掲載されることは予見していないのが通常」としながらも、「出版社からの取材に応じた者が、自己のコメント内容がそのままの形で記事として掲載されることに同意していた場合、または自己のコメント内容がそのままの形で記事として掲載される可能性が高いことを予測し、これを容認しながらあえて出版社に対してコメントを提供した場合」は、コメントによって名誉毀損が成り立つというログックを提示した。本件の場合もこれにあたり、名誉毀損との因果関係を認めた。

 また、烏賀陽氏側が提出していた「大手レコード会社員に対する取材結果」は、「会社員らが誰であるのかも明らかにされていない」などとして信用できない、とした。「被告代理人による売り上げ調査協力店への調査結果」についても「本件本訴の提起後に作成されたもの」などとして信用性に疑問とした。「ジャーナリスト・津田大介氏の取材結果」についても、「元従業員が誰であるのかも明らかにされていない」等として事実を立証するには不十分、とした。さらに、証人尋問で証言した元広報部員についても「予約もカウントに入ってくる旨の回答はしていない」とし、また電話取材で回答するのも不自然だ、などとした。

 反訴については、『サイゾー』の発行者や本件記事の編集者に対しては訴訟を提起せず、被告に対してのみ提訴したことについては、「全ての不法行為責任者に対して訴訟を提起する義務を負わない」として、違法と評価できない、とした。また、反論がある場合にはメディアで反論を求めるべきとしていたことには、「訴訟を提起しようとする者がそれに先立つ事前交渉を行う義務はない」「名誉毀損に対する対抗言論の手段を持つ者が訴訟提起の手段を自粛する義務を負うわけでもない」とした。

■「不誠実な判決」と弁護団

 判決後、弁護団は日本弁護士会館内で、傍聴してきたフリーライターらにブリーフィングを行った。そこで、烏賀陽氏側弁護団は「こちら側の疑問についても一切答えていない。提訴後に行ったレコード店への調査などを認めず、苦しい部分は信用できないとして一切認めなかった。一方的で不誠実な判決。全く説得力がない」と断じ、また「全面的に負けた」と位置づけ、控訴する方針を明らかにした。

■「恫喝訴訟をした者が得になってしまう」と烏賀陽氏

 また、烏賀陽氏は判決について以下のように述べた。

 「今回の裁判は、たまたまオリコン対烏賀陽弘道、という形をとっているけれど、民主主義および言論の自由を守ろうとする人とそれをぶちこわそうとする人たちの争いだった。裁判所は、後者に信用性があると判断を下した。これでは恫喝訴訟をした者が得だ、ということになる。私はこれを暗黒時代の幕開けにしてはいけないと思う。ジャーナリストであろうと、市民の声であろうと、裁判でねじ伏せることができるようになってしまう。これが認められると、報道が電話取材することが成立しなくなる。また、書いた人間の文責は問われず、取材源だけが狙われるようになる。判決が覆るまで闘う」

(記者:渋井 哲也)

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