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2008年04月20日(日) 18時57分

「啓祐、君を忘れない」 筑前いじめ自殺で両親が手記朝日新聞

 いじめを苦に06年10月に自殺した福岡県筑前町の森啓祐君(当時13)の両親が、手記「啓祐、君を忘れない」を出版した。副題は「いじめ自殺の根絶を求めて」。2人は「同じ世代の子どもを持つ親たちに読んでもらいたい。この問題を第三者の視点ではなく、自分のこととして考えるきっかけにして」と訴えている。

森啓祐君の両親が出版した手記「啓祐、君をあ忘れない」

 「人は記憶が薄れていく。いまの心境を、いましか書けないものを、きちんと伝えていきたい」。啓祐君が亡くなって最初の節目となった昨年夏の初盆、父親の順二さん(41)と母親の美加さん(37)は執筆を決意した。それから今年2月まで、約半年かけて書き上げた。

 1章は「突然の悲劇」。06年10月11日夜、自宅横にある倉庫で遺体を見つけたときの衝撃、「いじめられて、もういきていけない」と書かれた遺書、子どもの異変に気づいてやれなかった両親の悔い……。親としての思いが赤裸々につづられている。

 2章では、自殺の真相究明を求める2人の動きと、隠蔽(いんぺい)ともとれる学校や町教委の対応に対するいら立ちから、学校内での情報が十分知らされない遺族のために「知る権利」の確立を訴える。昨年2月に実名公表に踏み切った理由について「真相を知るために、私たちも情報を開示することが必要」と打ち明ける。

 美加さんは「いざ本になって読み返すと、改めて、いるべき啓祐がいないという喪失感に襲われた。同時に(啓祐からは)自殺せざるを得なかった状況を『伝えるべきだ』と言われている気がする」と話している。

 大月書店(東京)刊。四六判133ページで、1200円(税別)。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0420/SEB200804200009.html