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2008年04月20日(日) 18時51分

ソースにだし汁、どんぶりで味わう「神戸たこ焼き」朝日新聞

 「神戸たこ焼き」を知っていますか? 大阪のたこ焼きのソースと、明石焼きのだし汁の両方を使って食べるたこ焼きだ。神戸市長田区や兵庫区に伝わるこの食べ物が、情報誌やインターネットのブログなどで珍しいB級グルメとして取り上げられ、今では地元の小さな店に関東や九州からも客がやって来る。「そばめし」に続け! 地域おこしの目玉にと期待する声も出ている。

丼いっぱいのだし汁とソースで味付けしたたこ焼き(300円)を手にする「おふくろさん」の店主城野邦子さん=神戸市長田区海運町8丁目

少量のだし汁の上からソースがかかっている、駄菓子店「淡路屋」のたこ焼き(180円)=神戸市兵庫区笠松通7丁目

だし汁を注ぎ、ソースと天かす、三つ葉を入れる「神戸たこ焼き味一」のたこ焼き(400円)=兵庫区荒田町4丁目

 神戸市長田区の海岸近くの民家1階にあるたこ焼き店「おふくろさん」。L字のカウンターだけで席は七つ。

 注文を受けると、店主の城野邦子さん(70)がハケでソースを塗ったどんぶりにたこ焼き15個を入れ、温かいだし汁をなみなみ注ぐ。刻みネギとさらにソースをかけて出来上がり。かつおだしの薄味スープと酸味のあるソースが混ざりあう汁に、たこ焼きがぷくぷく浮いている。たこ焼きをはしですくい、スープを飲み干すのが食べ方だ。

 店を始めて30年近く。城野さんは「5歳ごろから近所の駄菓子屋で当たり前に食べていた味」と話し、「小麦粉も、卵も、高くなって大変。でも、常連さんを思うと値上げしたくない」と話す。

 遠方から客が来るようになったのは数年前。今では地図を片手にやってくる客や、実物を写真に撮る客の姿が見られるようになった。

 長田区、兵庫区、中央区にはソースとだし汁で食べる店が少なくとも十数軒ある。どんぶりにたこ焼きだけを入れ、客がだしとソースを自由にかける店もあり、最初はソース味で、次はだし汁で、締めは両方使って楽しむ客もいる。吸い物のように、たっぷりの汁の上から天かすや三つ葉をかける店もある。

 日本コナモン協会(大阪市浪速区)などによると、大阪のたこ焼きは昭和初期に生まれた「ラジオ焼き」というおやつから発展。だし汁を付けて食べる明石焼きはすでに明治時代にはあり、タマゴが多くふわふわで「玉子焼き」とも呼ばれてきた。神戸たこ焼きは、生地はしっかりめで具はタコだけ。

 「『何だその食べ方は』と言われたのが悔しかった」。兵庫区出身の会社員佃和喜さん(40)=神戸市灘区=は、他の地域の出身の友達からこうバカにされた経験から、2年前に「神戸たこ焼き」と名付けたブログを開設して店の紹介を始めた。

 「当たり前だと思っていたたこ焼きの食べ方を知人に話したら通じなかった」「県外の友達から気持ち悪いと言われた」。ブログにはこんな反応が寄せられ、アクセス数は日に300件を超える。

 佃さんは「懐かしくてホッと落ち着く味。新しいご当地グルメとして全国に発信したい」。2月に在阪民放の番組で紹介され、3月にはグルメ雑誌「あまから手帖(てちょう)」や生活情報紙でも取り上げられた。

 日本コナモン協会長の熊谷真菜さん(46)は「最初は邪道かと思ったが、食べたら意外と相性が良かった。ご飯と焼きそばをミックスさせたそばめしを思わせる」と分析し、「神戸のイメージに合わせて皿やトッピングに上品さを加味すれば、たこ焼きに新旋風を巻き起こしてくれそうな気がする」と期待をよせる。(本間沙織) アサヒ・コムトップへ

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