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2008年04月20日(日) 11時15分

記されない「年齢制限」と定年退職者の再就職オーマイニュース

 団塊世代の定年退職が本格化してきました。団塊世代の多くの人にとって、再就職は最大関心事でしょう。めでたく定年を迎え、「毎日が日曜日」を満喫している羨ましい環境の方は別として、再就職を希望しながら果たせず、日々悶々としている方にとっては地獄の毎日です。

 2007年9月に記者の書いた「 今こそ雇用者側の意識改革を! 能力ある中高年のチャンス──10月1日から改正雇用対策法 」との記事がオーマイニュースに掲載されました。同法は企業の求人・採用で年齢制限を原則として禁じました。果たして変革はあったのでしょうか。その後を検証してみました。

◆転職者を欺くな!

 厚生年金の支給年齢(65歳)まで働きたい、あるいは働かなくてはならない人にとっては、絶望的な雇用環境です。雇用環境が改善されたといっても、それは若い人に当てはまる言葉で、依然として過酷な就職難が続いています。

 知人のひとりは、昨年60歳定年を迎えた、ピカピカの定年退職者です。前職のキャリアを生かすのが一番と品質管理・品質保証職を求めて毎日応募書類を送り続けてきました。

 ハローワークで希望職種をやっとのことで見つけ出し、いそいそと履歴書を紹介状に添え応募しても「残念ながら貴意に沿いかねます」と決まり文句の文書が返送されてくるばかりです。

 応募先は優に30社を超えました。仕事の内容に対して求める経験・スキルは十分と自信を持って奔走すること6カ月、最初の元気はどこえやら、息切れがして諦めの境地だと言います。「断りの理由が納得いかない」とこぼしています。

 世話になっている再就職支援会社から聞いた話では、書類選考不可の理由の第一が「年齢」だそうです。多くの場合、資格やスキル不足ではなく「高年齢者お断り」「35歳まで希望」の実態が、そこにはあるのです。

 ハローワーク担当者も採用担当者も、無駄な労力と時間を使っていると言えます。「性別不問・年齢不問」と書いているからには、ハローワークの担当者は老若男女を問わず希望する人全員を紹介し、採用担当者も応募者全員を選考せざるを得ません。こんな理不尽なことがあっていいのでしょうか。

 高齢者を採用する気などなく、形だけの選考がまかり通っています。転職者を欺いているといっても過言ではありません!

◆もう騙し合いは止めて!

 無駄な作業を延々と続けていると、自分が惨めになってきます。「書類選考の結果、不可」でしたという、キャリアの否定にも等しい事実が自己の否定につながり、どんどんマイナスのスパイラルに陥り、精神疾患の一歩手前になる人もいます。

 ハローワークの求人票には、ほんの一部を除いて「年齢不問」、または「59歳まで」となっています。誰でも応募できるということです。しかしながら「高齢者も応募はできるが採用はしない」という企業側の都合は見えません。

 はじめから徒労に終わることを知っていながら応募を勧めるハローワークの担当者は何を考えているのでしょうか。男女不問・年齢不問を行政指導した当局は、知っていながら知らんぷりです。いっそのこと、元に戻して希望年齢を記載したらどうでしょうか。もし年齢記載ができないなら、経験・スキルの記入欄をもっと充実すべきです。

 もういい加減に騙し合いは止めませんか?

 はなから相手にされない企業に紹介状を今日もせっせと送り続けている定年退職者の気持をハローワークの担当者、そして採用担当者はなぜ理解してくれないのでしょうか。

(記者:宮本 聰)

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