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2008年04月19日(土) 09時00分

日本経済の今後と橋本府知事に期待することMONEYzine

■借金に支えられた生活水準−サブプライムローンの場合

 カリフォルニア州の郊外に住むAさんは、自宅の他に3件の不動産を所有している。自宅以外の不動産はすべて投資目的で、2ー3年で売却することを前提に、3年間は金利が低く抑えられるサブプライムローンを利用し購入した。

 このような戦略はここ数年非常にうまくいき、Aさんは売却益などで自宅を2回買い換え今は市の中心の高級マンションに住み、趣味のスポーツカーを4台保有していた。

 状況が変わったのは昨年春以降だ。まずローンの借り換えができなくなった。投資用の不動産を売りに出した所、購入価格より低い値段を提示しても買い手がつかない。月々のローンの支払いやスポーツカーなどの維持費に窮したAさんは、サブプライムローンの支払いを止め、不動産を銀行に引き渡すことを決断する。しかし自宅は依然高級マンションで、趣味のスポーツカーもそのままだ。

 米国では住宅ローンなどの信用情報が非常に重視されるが、Aさんは自分の趣味と生活水準の維持を優先した。住宅市場が回復することを期待して。

■自治体の破綻−夕張市の場合

 2006年、北海道の夕張市は財政再建団体への適用を総務省に申請した。いわば、自治体が破綻したのだ。2007年度から18年に及ぶ再建計画は極めて厳しい内容になっている。支出を削減し、収入を増加させ、さらに過去の借金を返済する必要があるからだ。

 人件費の4割5割の削減、徹底した公共施設や市民サービスの削減と課金が行われ、平成19年度予算で、歳出を前年比3割減をする一方、歳出は2割弱の減少に留めた。自治体が借金をできなくなってしまい、市民は生活水準を大きく落とす必要が生じた。

■大阪府橋下知事の借金漬け経済から脱却への決意

 若干38歳で大阪府知事に就任した橋下徹知事(正確には知事直轄の改革プロジェクトチーム〔PT〕)は、平成20年度に約1100億円の収支改善を提案した。

 大阪府は4兆円を超える府債残高に加え、第3セクターなどにも貸付金があり、新聞等で府債の借り換え問題が報道されたように、財政が危機的であると認識されている。

 歳出規模が100億円に満たない夕張市と比べて、大阪府は3兆円を超える日本でも規模の大きな自治体の1つであり、財政再建の難しさが指摘されると共に、大規模自治体の財政再建のモデルとして注目されている。

 橋下徹知事の案では、人件費、医療費補助、公共事業費、公共施設やサービスなど府民の生活に直接影響を与える項目も含まれている。

 メッセージは明確で、
「今の生活水準は維持できない」
「それでもやらなければ自治体そのものが破綻し、状況はもっとひどくなる」
と伝えているように感じる。裏を返せば夕張と同じで、自治体レベルで借金をすることで府民は生活水準を高く保ってきたのかもしれない。

 彼は若い。将来の自分の身の振り方や落とし所を考えていない。議会や支持団体のしがらみがない。だからこそ進むべき方針を迷うことなく示すことができるのだろう。

 この方針を実行できるかどうかは、ひとえに彼の能力にかかっている。放置しておくと近い将来大阪府の財政は危機的状況に陥る。がけっぷちの大阪府を救ってもらいたい。

■日本全体の財政の場合

 実はこの話は自治体だけの話ではない。自治体より日本全体のほうが問題である。日本政府の財政についても全く同じことが当てはまると思う。

 ことは1980年代後半のバブル経済から始まる。バブル経済当時、日本人は土地や株式の値上がり益を消費として使用した。お金は湧いてくるものと思い、飲んで食べて買い物をした。その後バブルが破裂するとお金を払えなくなってしまった。

 土地や株が上がった分は使ってしまったので、下がった時には返せないのだ。お金がなくなってしまった国民に、国は「財政支出」という形でお金を刷って配った。つまり、国が借金をしてくれたために、国民の生活水準を高く保つことができた。

 しかし、この魔法の生活は長続きしない。シンデレラにかけられた魔法のように限界がある。今や国債の発行残高は天文学的な数字になり、税金による歳入は歳出の半分強しかまかなえていない。将来、歳出は間違いなく大幅に削減される。税金は高くなり、公共サービスは激減する。

■サザエさんで描かれている生活

 最近「サザエさん」を読む機会があった。昭和30年代に比べ、現代の生活水準がどれだけ高いかを認識するいい機会になった。日本人として日本に住むことを選ぶなら、自分たちの生活水準を切り下げる必要があること、切り下げた後はどんな生活になるのかを心で準備しておく必要がある。

【詳細画像はこちら】

「サザエさん」では、決して裕福ではない暮らしの中、皆生き生きと暮らしている。我々は生活の便利さを手に入れると同時に、何を失ってしまったのだろうか。

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(課長 今調査役)

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