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2008年04月18日(金) 00時00分

食糧サミット開催 国連、途上国の危機に対応読売新聞

 【ブラックスバーグ(米バージニア州)=白川義和】食糧価格の急騰で途上国を中心に暴動や抗議行動が相次いでいる問題で、国連は17日、潘基文(パンギムン)事務総長をトップとする「ハイレベル作業部会」を設置し、各国首脳が集う「食糧サミット」を数か月以内に開催する方針を固めた。

 いずれも初めての試みで、深刻化する途上国の食糧危機に対する国際社会の戦略構築を目指す。

 方針は、国連人道問題調整事務所(OCHA)、世界食糧計画(WFP)、食糧農業機関(FAO)など国連の食糧関係機関・部局が「地球的食糧課題」と題し、潘事務総長への提言文書としてまとめた。潘事務総長と国連高官による政策委員会で正式決定する。

 読売新聞が入手した同文書によると、ハイレベル作業部会は4月末にも設置。食糧援助や農業生産、バイオ燃料への対処などで、国連各機関による「調整され、一貫性のある対応」に向けた国際的戦略を構築する。

 食糧サミットは、作業部会が構築する戦略を承認する場で、首脳レベルで食糧危機と対策の重要性を訴える機会となる。

[解説]関係国の利害調整焦点

 国連が「食糧サミット」開催などを通じて食糧危機への中長期的な国際戦略を構築する方針を固めた背景には、今回の食糧価格高騰が「これまでになく急速で継続している」(提言文書)ことがある。ほぼすべての主要穀物が長期的な値上がりを続ける状態で、構造的、抜本的な対策が求められているということだ。

 提言文書は危機の要因として、〈1〉中国、インドの高成長による食糧需要の増大〈2〉バイオ燃料の需要増に伴う燃料用穀物への生産転換〈3〉食糧備蓄量の世界的減少——を挙げ、地球温暖化による将来の生産減少も懸念している。穀物市場への投機マネー流入や、生産国による輸出禁止、規制も状況の悪化につながっている。

 今後、戦略を推進するうえでは関係国間の利害調整が不可欠となる。バイオ燃料の問題では、ブラジルのような推進国は気候変動抑制に果たす役割を強調し、食糧用農地の確保には消極的な姿勢を取るだろう。国内用食糧確保のため、輸出禁止に踏み切る国をどう説得するかも課題だ。中国、インドの食糧をいかに支えていくかも世界的規模で考えなくてはならない。

 食糧問題は今、気候変動と同様に各国の英知が問われている。その調整役を担う国連と潘基文事務総長の責任は重い。(白川義和)

http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/20080418gr01.htm