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2008年04月18日(金) 00時00分

経産省が樹脂サンダルの改良指導へ読売新聞

「素材、挟まれやすい」

 人気の樹脂製サンダルを履いた子供らが、エスカレーターのすき間に足を挟まれる事故が相次いでいる問題で、経済産業省は、サンダルの素材や構造が他の履物に比べて挟まれやすいことが主な原因であるとの結論を出した。経産省は18日午後、メーカー名を公表して消費者に注意喚起する。経産省は、国内メーカーだけでなく、大半を製造する海外のメーカーにも国内の販売会社を通じ、設計の変更を含む改良を求める指導を行う方針だ。

 経産省によると、昨年5〜11月の間、東京や福岡など13都府県で、サンダルのつま先などが、エスカレーターの踏み台と側面との数ミリのすき間に挟まれる事故が計65件起き、足の指を折るなど計17人がけがを負った。大半は1〜10歳の子どもで、ステップで立つことが禁じられた黄色の枠の部分に乗ったとみられる。

 経産省が同種のサンダルの大半を製造する米国の靴メーカー「クロックス」に海外での被害状況を問い合わせたところ、米国でも約40件が発生していた。ほかに欧州、アフリカなど少なくとも12の国・地域で事故があったことも判明した。

 被害の広がりを受け、消費者使用製品の安全性を分析する製品評価技術基盤機構(東京・渋谷区)が、流通量の多い7社のサンダルを実際にエスカレーターを使って実験したところ、うち6社の製品で挟まれることを確認した。素材がポリエチレン主体で、長靴や運動靴と比べて柔らかく滑りにくいうえ、よく伸縮するため、すき間に挟まれた後に足が抜けにくいことも明らかになった。

 経産省は同機構からの報告を受け、安全性に問題があり、素材変更など抜本的な改良が不可欠と判断。日本国内の販売会社を通してクロックスなどのメーカーに対し、早急に再発防止策を取るよう、近く指導する。

 「クロックス・エイジア・プライベート・リミテッド」(本社・シンガポール)日本支社は、「販売中止はしないが、米国の本社と連携し、安全を最優先に考えた製品開発をしたい」としている。

 樹脂製サンダル 甲の部分に通気穴があき、木靴のように足を覆うユニークなデザインが特徴。国内では昨年、米国のクロックス社の製品が履き心地や豊富な色の種類で注目を集め、同社の約390万足を含め、約10社の計約500万〜600万足が流通するヒット商品となった。

[解説]海外メーカー米にも協力要請

 樹脂製サンダルの大半は海外メーカーの製品で、経済産業省には直接の指導権限はない。今回、経産省は国内の支社や輸入販売業者を通じ、製品改良を求め、事故再発防止に乗り出す。

 事故が多発した昨夏以降、経産省はクロックスの日本支社に製品改良を求めてきた。米国本社幹部にも接触したが、処分を伴わない日本の「行政指導」に効き目はなく、同社は改良しないまま販売を続けている。

 経産省幹部は今年2月に訪米し、大統領直轄機関の「米消費者製品安全委員会」に、サンダル事故の情報を非公式に提供し、米国本社への指導を求めている。

 海外製品で事故が多発する中、メーカーの所在する国に協力を求めることは珍しい。経産省では、製品改良に応じない場合は、「使用中止」や「製品廃棄」を消費者に呼びかけることも検討している。(西部社会部 高橋雄介)

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20080418ok0a.htm