記事登録
2008年04月18日(金) 10時06分

中国人が欧米でデモ計画 対中批判に対抗、国内でも朝日新聞

 【北京=峯村健司】中国チベット自治区の騒乱をめぐり、欧米で広がる対中批判に中国国内で反発が強まり、国内で抗議デモが計画されている。当局も黙認する構えで、今後さらに広がる気配だ。欧州各地でも19日、現地の中国人が一斉に抗議行動を起こす予定がある。ナショナリズムの高まりを背景に、中国側が巻き返しに出る格好だ。

 中国国内では19日に、湖北省武漢市でデモが計画されている。中心人物の一人である自営業の男性によると、仏領事館前や仏大手スーパー「カルフール」前でデモをする予定で、300人以上が参加する見込みだ。中国ではデモや集会は公安当局の許可が必要だが、男性は「許可を得ると、政府がデモを扇動していると欧米諸国から批判される」と述べ、あえて申請しないとしている。

 1919年に起きた対日抗議運動「5・4運動」の記念日には例年、中国では民族主義が高まる。こうした時期に今回の動きが重なり、大衆デモが今後、中国各地に広がる可能性も出てきた。

 また、16日付の国際問題を扱うタブロイド紙「環球時報」によると、パリ、ロンドン、ベルリンの在留中国人が19日、一斉に抗議デモをする予定で、参加者数は計1万人を超える見通しだという。主催者は「欧米メディアの偏向報道に抗議し、世界にチベット独立反対を訴えたい」と述べており、海外から中国政府を後押しする構えだ。

 パリのデモ関係者には「当日は銃撃が起きる」という脅迫文が届いているといい、混乱も予想される。米ニューヨークでも5月4日に大規模な集会が予定されている。

 こうした動きについて、中国外務省の姜瑜副報道局長は15日の会見で「民衆の自発的な言動」として、政府の関与を否定。しかし、北京の外交筋は「市民の抗議の声を盛り上げることで、北京五輪をめぐる欧米諸国の包囲網に対抗し、不満のガス抜きをするのが狙い」と見ており、当局が関与している可能性を指摘する。

 当局が管理下におく各メディアでは、「反欧米」や民族主義をあおる記事が目立っている。北京の夕刊紙「法制晩報」は16日、北京五輪の成功と愛国意識を高めるキャンペーンを開始。特集記事を組んで、中国国旗の色である赤と黄を使った「北京加油(がんばれ)」と書かれたシールを各地で配布している。

 インターネットでも「今こそ市民が立ち上がって欧米による五輪破壊を阻止すべきだ」「外資系ファストフードに行くな」などの書き込みが増え、ナショナリズム感情の高揚がうかがえる。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/international/update/0418/TKY200804170308.html