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2008年04月18日(金) 15時10分

75歳以上医療制度に67歳障害者「自動加入」で負担増朝日新聞

 4月に始まった後期高齢者医療制度に加入するかしないかは本人が選択できる重度障害者が、十分な説明を受けないまま自動的に加入させられていた。家族に扶養されていた東京都江東区の男性(67)は、加入によって扶養から外れて保険料を本人負担することになった。

 65〜74歳の重度障害者は、これまで、75歳以上と同様に老人保健制度(老健)を適用されていた。今回、老健が廃止され、新制度に加入することになった。ただ、所得によって保険料負担が増える人もいる。被扶養者の場合、これまでは保険料の本人負担は無かったが、新制度加入後は、本人負担となる。

 新制度への加入は、本人が拒否しない限り行政側が自動的に手続きをする。障害者団体は「事前説明が十分でなく、本人の意思に反して新制度に加入させられているケースが多い」と主張している。

 両足にまひがあり、歩くのに装具が必要な東京都江東区の男性は今月中旬、かかりつけの医院で受診した時に初めて新制度に加入していたことを知った。新制度のことは知っていたが、75歳以上の人が対象だと思っていた。

 これまで男性は長男が加入する医療保険で被扶養者扱いだったため、保険料負担は無かった。新制度では、軽減措置で最初の半年間は保険料負担はゼロだが、その後は支払わなければならない。

 収入は自身と妻の年金を合わせて月に約22万円。男性は糖尿病の持病があり、月1回ほど内科で受診する。神経内科や皮膚科にも通っており、医療費は妻と合わせて月約1万5千円。食費や光熱費、移動に必要なタクシー代などを差し引くと、ほとんど手元に残らないという。

 男性は「『どちらを選びますか』という知らせもなく勝手に新しい制度に移すなんてもってのほか。役所は何かあれば窓口に来いというが、障害者にとって役所まで行くのは簡単ではない」と憤る。

 江東区役所は今年に入り、新制度に加入するか意思を確かめる文書を障害者に送付した。ただ、書面には「届ければ加入しなくても良い」「希望しない場合はお早めに区役所に相談および届け出を」などとあるだけで、加入に伴う保険料負担に関する説明はない。脱退すれば被扶養者に戻れるため、男性は脱退する方向で考えたいという。(南宏美) アサヒ・コムトップへ

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