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2008年04月18日(金) 13時10分

長野聖火リレー 善光寺が辞退、出発地を変更 朝日新聞

 26日の長野市の北京五輪聖火リレーの出発式会場が18日、善光寺境内から変更されることが決まった。同寺が同日午前に辞退を申し出て、市や日本オリンピック委員会(JOC)などでつくる実行委員会側が受け入れた。同市のリレーで初の計画変更となり、実行委は新たな出発地の選定作業に入った。

当初の聖火リレーコース

善光寺事務局の若麻績信昭・寺務総長(左から2人目)は出発地を辞退する考えを表明した=18日午後0時40分、長野市役所

 善光寺と実行委が同日正午過ぎ、共同で会見して明らかにした。同寺事務局の若麻績(わかおみ)信昭・寺務総長は「文化財や信者を守らなければならない。また、チベット人の人権への弾圧が行われていることについて同じ仏教徒として憂慮した」と理由を述べた。

 一方、実行委の篠原邦彦事務局長は会見後、「大変衝撃を受けている。善光寺の総意であれば受け入れざるを得ない。ルートの変更をする必要があるが、最小限にとどめたい」と語った。一両日中に新たな出発地を決める方針だ。

 当初計画では、聖火の出発式・点火式は午前8時から善光寺境内の本堂(国宝)前で開催。聖火は午前8時半、本堂の数十メートル南側にある三門(国の重要文化財)を抜けて市街地に出る予定だった。本番を8日後に控えた時点のルート変更で、県警や実行委の警備計画の変更は避けられない事態となった。

 辞退の背景には、善光寺内に混乱への懸念や仏教徒としてのチベット側への理解があるとみられる。宿坊の住職は「世界中で混乱が起きている状況を踏まえれば、出発地を返上することもやむを得ない」と話していた。

 別の宿坊の関係者は「平和の象徴である善光寺で、厳戒態勢が敷かれたり、万が一、暴動などが起きるようでは困る」と語った。ほかの宿坊の関係者も「世界に善光寺をアピールできるチャンスだった。抗議に負けないように開催できれば良かったが問題が起きると困る」と語っていた。

 一方、3千人規模の警備で備える予定の県警の幹部は「人が最も集まる出発式会場は、警備上最も重視すべき場所。この時期に変更は大変」と困惑する。

 実行委はこれまで、リレー当日は混乱も予想されることから、善光寺の参道への一般客の立ち入り規制を検討していた。それに対して、善光寺事務局は、「参拝客を最優先にしたい」との立場をとっていた。

 ■世界各地で妨害・変更相次ぐ

 3月24日に始まった北京五輪の聖火リレーは、チベット問題をめぐって中国政府への抗議を訴える妨害活動が続き、コースの短縮や走者の辞退などが相次いでいる。

 ギリシャの採火式で抗議活動があったのを皮切りに、ロンドン(4月6日)、パリ(7日)と激しい抗議が続いた。消火器で聖火を消そうとしたり、チベットの旗を掲げてコースに乱入したり。パリでは終盤、聖火がバスで運ばれ、パリ市庁舎での式典も中止に。9日の米サンフランシスコでは、沿道の観客に知らせないまま、コースを変更する事態となった。

 16日のパキスタンでも、当初はイスラマバードの大統領府前を出発して大通りを走るコースだったが、競技場周辺に切り替えた。

 17日にあったインドの首都ニューデリーでは、9キロの予定を2キロに短縮。周辺道路を封鎖して、1万5千人の治安要員を配置する厳戒ぶり。開始時間も直前まで明らかにしなかった。サッカー代表主将や女優らが抗議を示唆して参加を辞退した。

 今後、聖火が向かう予定のマレーシア、インドネシア、香港などでもコースの短縮が検討されている。

 一方、各地で続く妨害活動に中国国内では反発の声が高まっており、フランス製品の不買運動も起きている。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/national/update/0418/TKY200804180128.html