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2008年04月17日(木) 01時49分

北朝鮮に「穀物危機」 コメ・トウモロコシ価格急騰朝日新聞

 【瀋陽=古谷浩一、ソウル=箱田哲也】北朝鮮でコメやトウモロコシの市場価格が急騰している。昨年の水害被害による収穫不足に加え、最大の輸入相手国である中国が世界的な穀物価格の高騰を受け、事実上の輸出制限措置を強めていることが影響しているようだ。中朝国境地帯では、食糧事情の悪化を受けた脱北者増加の防止策が強められている。

 北朝鮮の食糧事情に詳しい関係者によると、14日現在、北朝鮮・清津でのコメ1キロの価格は2100ウォン(実勢レートで100ウォン=約3円)。昨年12月には1千ウォンほどだったが、今年2月に1300ウォンに上がっていた。トウモロコシも昨年の約2倍の1キロ850ウォンに上がっているという。

 世界食糧計画(WFP)は16日、北朝鮮が食糧不足に陥りつつあると警告し、国際的援助の必要性を訴える文書を発表した。国連食糧農業機関(FAO)の報告書によると、07年の北朝鮮の穀物生産量は前年比100万トン減の約300万トン。集中豪雨や台風で被害が拡大し、コメは同25%、トウモロコシは同33%減ったという。4〜6月の穀物収穫の端境期を迎え、深刻な食糧不足への懸念から市場価格が急騰しているようだ。

 中国商務省の統計では、今年1〜2月の北朝鮮へのコメ輸出量は1万9979トンで、前年同期比89%の増加。しかし、中国政府は国内の穀物価格安定のために、1月からコメなどの輸出に暫定関税を課すなど引き締め措置を強めている。中朝国境の図們江(豆満江)の通関の一部で「コメ輸出がとまった」といった未確認情報も流れ、こうした状況が北朝鮮内の市場価格高騰に拍車をかけているという。

 韓国政府関係者は16日、中国から北朝鮮への穀物輸出量が今年に入って急激に減少、北朝鮮の穀物価格がはね上がっているとし、「国際市場での原油高、穀物価格の高騰が原因とみられるが、このまま課税措置が続けば北のダメージは計り知れない」と指摘。別の韓国政府筋によると、北朝鮮当局は最近、輸出制限措置を取りやめるよう中国側に要請したという。

 配給制度が崩壊した北朝鮮で、市場の価格高騰は庶民にとって死活問題。清津では3月初め、市場で商売をする女性の年齢が制限されたことに対し、1万人とも言われる市民が集団抗議したと伝えられる。中国に脱北した女性(42)は「商売ができなければ、食べていけない。当局への抗議も辞さないほど追いつめられている」と話した。

 一方、図們江沿いの中国側では、密輸や脱北の防止を狙った鉄条網や監視カメラの設置が進む。北朝鮮側も取り締まりを強めている模様で、地元関係者によると、3月下旬には南陽で、2〜64歳の女性42人が集団で脱北を試み、北朝鮮当局によって拘束される事件があったという。この関係者は「食糧事情の悪化を示すものだ」と話している。 アサヒ・コムトップへ

http://www.asahi.com/international/update/0417/TKY200804160365.html